さあ、競争の始まりだ。巨人の合同自主トレが28日、宮崎市内でスタートした。阿部慎之助内野手(35)と村田修一内野手(34)が同時間に対照的な調整で4番奪取に向けて動き始めれば、先発ローテを競う西村健太朗投手(29)と小山雄輝投手(26)がともにブルペン入り。「新成」のスローガンの下、チームを解体するという大号令に呼応するように、各所でポジション争いの幕が静かに開いた。

 アップ時に見せていた各選手の笑顔は、徐々に消えていった。投手と野手が別れてそれぞれの練習に特化していくと、表情に鋭さが宿った。「新成」のスローガンを掲げ、チームを解体して土台を作る方針の通り、キャンプでは一からのポジション争いが始まる。だからこそ、早くも各所で静かに競争が始まっていた。

 室内練習場では、4番候補の2人が対照的な打撃音を交錯させた。阿部は「自己満足ぐらいのつもりでやっていきたい」との宣言通り、打撃ケージの主と化した。「一番リラックスしたところで構えていきたい。数を打って、無意識でスイングするだけ」と約1時間も豪快な音を響かせ、新フォーム固めを徹底した。

 その脇で、村田が黙々とティー打撃を繰り返していた。阿部の快音は耳に入っていた。だが、ペースは崩さず、乾いた打球音を淡々と刻んだ。「開幕のそこ(4番)のポジションを狙ってやるのが僕の責任。いい競争ができたらいいと思う」。静かな口調ながら、強烈な競争意欲を示した。

 投手陣でも、静かに競争が始まっていた。ブルペンでは先発転向の西村と小山が並んで腕を振った。数少ない先発ローテ枠を狙う2人だが、お互いの存在について「気にならなかったです」と口をそろえた。だが、こう続けた。「周りに惑わされず開幕ローテを目指してやります」(西村)「自分のことをしっかりするだけ」(小山)。競争を意識するからこそ、自分をしっかり見つめていた。

 ドラフト3位の高木勇人投手(25=三菱重工名古屋)も沢村とのキャッチボールでは「勉強になることしかなかった」と初々しさを見せていたが、ブルペンでは一変。納得いかずに1球多く投じた。同じ中継ぎの高木京がブルペンでキレのいい球を投げ込んでいただけに、「周りもすごい選手しかいない」と気を引き締めた。明るい雰囲気の中にも、バチバチとした火花が散る。中身の詰まった、「新成」巨人の1日目だった。【浜本卓也】

 ◆巨人の定位置「対決」

 正捕手は「新加入のベテラン相川VS2年目小林」という、年の差13歳の2人がせめぎ合う。守護神は「実績十分のマシソンVSリリーフ転向の沢村」、二塁手は「片岡VS井端」がしのぎを削る。最も競争が激しいのが外野手だろう。膝と肘の手術明けの長野は順調に回復中。アンダーソン、高橋由、亀井に加え、橋本、大田といった伸び盛りの若手に、鈴木、矢野、松本哲、セペダが加わり、多くの対決が繰り広げられる。