阪神マット・マートン外野手(33)が米球界から「黒田退治」のスナイパー役を託された。来日2日後の29日、甲子園室内でキャッチボールや打撃練習など精力的に汗を流した。ヤンキースで活躍していた黒田が今季からライバル広島に復帰すると、旧知の大リーガーから情報収集してエールも送られた。昨季の首位打者が、初顔合わせとなるカープの注目右腕に立ち向かう。

 いつになく小顔になって甲子園に戻ってきた。昼前だった。マートンが、いつも使っている国産車を運転して、ふらりとやって来た。日本でプレーして6年目になる。神戸の街も知り尽くす。いつもと同じ風景、同じ顔ぶれ…。ここが戦場なのだ。2月1日のキャンプインを前に早くも闘志みなぎる。

 室内練習場で打ち込む姿を視察したオマリー打撃コーチ補佐は「体が絞れているね!」と声を上ずらせた。米国でたゆまずトレーニングに励んだ成果だろう。あごは鋭いラインを描き、全身は引き締まっている。ダボダボのスウェットパンツが物語っていた。27日深夜に再来日したばかり。それでも、汗をかくため、球場にやって来た。

 「状態はいいよ。向こうとは時差がある。何とか、こっちの時間に慣れたい。オフにしっかりトレーニングしてきたのに4、5日、何もせずにキャンプに入るのは嫌だからね」

 昨季逃した日本一を目指すが、新たな強敵が出現した。昨季までヤンキースで活躍したKURODAの広島加入は新たな脅威だ。決定時に敏感に反応。「対戦した選手には『黒田はどうだ?』と聞いたよ。っていうのは冗談だけどね!」。笑い飛ばしながらも、こう続けた。「細かい話はしていないんだ。でも、彼への敬意を感じた。『頑張れよ』と言われたよ」。相手への研究を重ねることで日本で数々のタイトルを獲得してきたヒットマン。日米182勝右腕との対決を前に情報を集めた。すると黒田の実力を認める旧知の大リーガーからは活を入れられた。

 マートンはカブス、アスレチックス、ロッキーズを渡り歩いた大リーグ時代、黒田との対戦経験はない。「数字を見たら素晴らしい投手。200イニングも投げているし、間違いなく日本でも活躍する」と警戒した。いまは細かく動くムービングボールを粉砕する準備を整えるだけだ。

 帰り際の駐車場では練習に訪れたメッセンジャーと遭遇し、ハイタッチで再会を喜んだ。「選手である以上、毎年やらないといけない。野球選手として、もっとうまくなりたいんだ」。2015年、初の聖地で誓いを立てた。インサイドアウトのバットスイングは天下一品だ。熟練の技、そして闘志を世界の黒田にもぶつけていく。【酒井俊作】