「マッサン」と呼んでください!

 巨人岡本和真内野手(18=智弁学園)の愛称が「マッサン」に決まった。宮崎キャンプ第2クール2日目の7日、2軍では新愛称が一気に浸透。「マッサン」といえば、NHK連続テレビ小説のタイトルで主人公の愛称でもある。困難にめげず努力を重ねて日本初の国産ウイスキーを造りあげた主人公のように、コツコツと精進して球界を代表する大打者を目指す。

 「マッサ~ン!

 ナイスボール」。聞き慣れないニックネームが、ひむか球場の岡本に向けられた。投内連係で三塁から二塁に矢のような送球をすると、捕手陣から「マッサン」と呼びかけられた。気がつくと思わず帽子を右手で触り、笑みを浮かべた。名付け親は木村2軍投手コーチ。キャンプ第1クール後半から、じわりと浸透し始めていた。高校時代まで「奈良の怪童」と称されたスラッガーは、新愛称に「最近、みんなから言われます。みんなとの距離感が縮まったみたいで親しみやすいです」と照れ笑いした。チームになじんだ証しだった。

 「おかもとかずま」の「ま」を取り、「マッサン」。現在放送中のNHK連続テレビ小説のタイトルと同じだ。同ドラマは、主人公「マッサン」が失敗と挑戦を繰り返しながら、日本初の国産ウイスキー造りを目指す奮闘ぶりを描いた物語。地元の奈良を離れ、プロ野球選手として一人前になるために上京した岡本のサクセスストーリーと重なる部分がある。プロ入り前は「かずま」と呼ばれたが、12歳から朝の連続テレビ小説ウオッチャーでもあり「マッサン」の呼び名は、すでにお気に入り。「あだ名で呼ばれる方が接しやすいです」と喜んだ。

 新愛称で気分良く迎えたフリー打撃では、バックスクリーン直撃弾を含む3本のアーチを描いた。見守った原監督からはバットに関する助言も授かり「いろいろ話をしていただきました」と向上心を刺激された。

 長嶋終身名誉監督の「ミスター」、松井秀喜氏の「ゴジラ」など、巨人の超一流には親しまれた愛称の系譜がある。後藤2軍守備走塁コーチも「マー君(ヤンキース田中)のような、みんなから愛される、名前になってもらいたい」と願いを込めた。岡本は「マッサン」と誰からも愛情いっぱいに呼ばれる日まで、ウイスキーのように熟成を重ね、深みを出す努力を続けていく。【細江純平】

 ◆マッサン

 昨年9月末から現在も放送中のNHK連続テレビ小説。ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と、スコットランド出身のリタ夫人をモデルとした夫婦の人情喜劇。大正から戦後までを描く。広島の造り酒屋に生まれた亀山政春はウイスキー造りに目覚めてスコットランドに渡り、恋に落ちた現地女性エリーと駆け落ち同然に国際結婚。挫折を味わいながらも助け合い日本初のウイスキー造りに向かって奮闘する。朝ドラ初の外国人ヒロインでも話題に。

 ◆巨人選手の主な愛称

 古くは川上哲治の「打撃の神様」や「赤バット」、千葉茂の「猛牛」から始まり、長嶋茂雄の「ミスター」や王貞治の「ワンちゃん」は今でも親しみを込めて呼ばれている。リリーフで毎晩8時半ごろに登板した宮田征典は「8時半の男」、門限破りの常習だった堀内恒夫は「悪太郎」、トレードマークの手袋から柴田勲は「赤い手袋」と呼ばれた。他では城之内邦雄の「エースのジョー」、原辰徳の「若大将」、中畑清の「ヤッターマン」、松本匡史の「青い稲妻」、松井秀喜の「ゴジラ」などが有名。現役では「チョーさん」長野、「ぐっさん」山口など。王&長嶋の「ON」、マシソン-山口-西村の中継ぎユニットで、現在は解散した「スコット鉄太朗」など複数人をまとめた愛称も。