<日本ハム紅白戦:紅組1-1白組>◇9日◇沖縄・名護

 早くも出た!

 日本ハム大谷翔平投手(20)が9日、沖縄・名護で行われた紅白戦で今季実戦初マウンドに上がり、いきなり155キロをマークした。全48球のうち9球が150キロオーバー。2回を2安打1失点(自責0)にまとめた。寒さと調整不足のこの時期に150キロ超が出ることは異例で、ダイヤモンドバックスを含む他球団のスコアラーは驚嘆の声を上げた。

 思い切って腕を振り抜くと決めた。実戦初登板の大谷が背負った、3回2死一、三塁のピンチ。打席にはメジャー帰りの田中がいた。「走者も三塁にいたし、力を入れた方がバランスを整えやすいなというのもあった」。本気になった。“名刺代わり”の153キロ直球でストライクを取ると、続く2球目が、この日最速タイの155キロ。最後も直球で左飛に打ち取った。まだ2月のキャンプ第2クール。昨季の実戦初登板は最速148キロで、スケールアップは一目瞭然だった。

 序盤はワインドアップを試し、途中から昨季と同じセットポジションに変更した。自身の課題に取り組みながら、「真っすぐを中心に」48球中37球をストレートで押した。155キロを2度マークしたのをはじめ、9球が150キロ超え。4回の陽岱鋼からは、151キロ直球で空振り三振を奪った。「球速は、MAXが140キロの人もいれば150キロの人もいる。自分にとってそんなに重要なことではないです」と平然だが、陽は「翔平は文句なしですね。速かった」と脱帽した。

 フォークは抜け球が多くばらつきは目立ったが、握りを戻したスライダーも、捕手・石川亮が後逸するほどのキレで大きく曲がった。さらに昨季から練習する110キロ台のパワーカーブで、近藤から奪三振。「今年は使える。もっと増やそうと思います」。変化球にも手応えをつかんだ。ネット裏から熱視線を送ったダイヤモンドバックスのマック林環太平洋スカウト部長も「まだ2月。さすがです。シーズンを見るのが楽しみ」と絶賛した。

 ただひとり、栗山監督だけは厳しい表情だった。ボール球が多く、味方の失策が絡んだとはいえ失点したことに「まだ紅白戦だから…という気持ちがあるなら考え違い。必死に自分のポジションをつかみにいく戦いをして欲しかった」。開幕投手の最有力候補に、言葉も自然と厳しくなった。

 それも期待の表れ。明日11日は打者として阪神との練習試合(名護)に出場し、その後は17日韓国KIA戦(同)で2度目の登板も予定されている。大谷は「体調もすごくいいし、順調にきています」。着実に、確実にステップアップしている。【本間翼】

 ◆2月の球速

 この時期の155キロは速い。石井弘(ヤクルト)が04年2月26日、韓国・LGとの練習試合(浦添)で156キロ(LGのスピードガン)を出したが、本人は「156はない」と誤差を強調。藤浪(阪神)は昨年2月25日、LGとの練習試合(宜野座)で156キロを記録したが、当日の球場計測は不調でスコアボードに186キロと表示される一幕も。