10月27日のドラフト会議で日本ハムに1位指名された東海大・菅野智之投手(22=東海大相模)が21日、神奈川・平塚市内の同大野球部合宿所で会見を開き、日本ハムへの入団拒否を正式に表明した。元来、伯父の原辰徳監督(53)率いる巨人と相思相愛。日本ハムの高評価を光栄としながらも「自分の小さいころからの夢というものが、それ以上に強かったということ」と、来秋ドラフトでの巨人入りを目指し、1年間浪人する道を選んだ。日本ハムには同日朝、横井人輝監督(49)から電話で入団辞退の意向を伝えた。

 野球人生を大きく左右する決断を、菅野は強い決意とともに言葉にのせた。「日本ハムの方に評価してもらったことは本当に光栄に思いますし、ありがたいです。しかし、それ以上に、自分の小さいころからの夢というものが強かったということです」。選んだ答えは入団拒否。1年間の浪人生活を経て、再び来秋ドラフトを待つことだった。

 巨人原監督は、母詠美さん(48)の兄。菅野にとってプロ野球といえば巨人であり、尊敬する人物といえば原辰徳だった。その伯父が指揮する巨人は昨年12月から菅野のドラフト1位指名を表明。単独指名と信じていたが、交渉権を獲得したのは日本ハムだった。現行制度では、学生側は意中の球団を口にできない。菅野は“夢”について「すみません、分かってください」とだけ答えたが、“原監督のいる巨人でプレーすること”なのは明白。清武球団代表兼GMの解任騒動など、一連のお家騒ぎにも、信念は揺るがなかった。

 社会人野球、大学院進学…。選択肢は多々あった。だが独立リーグを含めどこかのチームに属すれば、再度ドラフト対象となるのに2年かかる。浪人は対外試合に出場できないなど大きなリスクを背負うが「それ以上の力をつければ、絶対に無駄な1年にはならない。もうひと回りもふた回りも大きくなって来年のドラフトを迎えられるようにしたい」。逆境も覚悟の上だ。

 もちろん、指名を2度拒否した巨人長野のように、来年も巨人以外の球団に指名される可能性はある。でもそれは菅野の意思ではどうにもならない。「今はそういうことは考えてません」と割り切り、海外でのトレーニングにも「そういうふうに時間を使ってみたい思いもある」と興味を示した。

 現在は卒業論文を執筆中で、横井監督は「卒業に向け最大限努力している。卒業できる段階になってから、学生野球憲章と大学の制度の兼ね合いで今後のことを考えます。大学院はあり得ない」と話した。日本ハム岩井担当スカウトにはこの日朝、同監督が電話で入団拒否の意向を伝達済みだ。異例のテレビカメラ11台、約80人の報道陣の前で「気持ちは変わりません」と話した菅野の目には、強い光が宿っていた。【鎌田良美】