<関東地区大学野球選手権:上武大2-1横浜商大>◇2回戦◇10月31日◇横浜

 阪神から1位指名を受けた横浜商大・岩貞祐太投手(22=必由館)が、13奪三振の快投を披露した。春の大学王者・上武大相手に初回の2失点が響き、8安打完投負け。1点差で惜敗し、大学生活のラストゲームとなったが、最速146キロの直球を武器に「能見2世」の異名通り、7回まで毎回の奪三振ショーを演じた。見守った北村スカウトも「いい素材」とほれ直した。

 156球を投げた。それでも9回裏、岩貞は味方の反撃を信じ延長に備えてファウルグラウンドで肩を温めた。しかし無情にももう1度マウンドに上がることはなかった。

 春の全日本大学野球選手権優勝の上武大を相手に、気持ちのこもった投球を見せた。「どうせダメなんだったら、九州とかじゃなくて関東でやりたい。やるだけやってダメなら諦めたい」。4年前、進路を決める際に母多恵子さん(48)へ伝えた思い。その原点を思い出すかのように、明治神宮大会を前に立ちはだかる王者を相手に、岩貞はマウンドで躍動した。7回まで毎回奪三振。8回に途切れはしたが、最速146キロの直球にカットボールやスライダーを織り交ぜ、13の三振を奪った。惜敗でも4年間の集大成を見せつけた。「つないでうんぬんは毛頭考えていなかった。つぶれるまで放らそうと考えていた」。試合後、岩貞との心中を明かした佐々木正雄監督(65)は「今日は取材はなしでお願いします」と奮闘したエースを気遣った。

 立ち上がりの連打をきっかけに初回に2点を失ったが、そこからはエンジン全開。3回以降毎回走者を背負う苦しい展開ながら、要所では三振でピンチを切り抜けた。見守った阪神北村スカウトも「走者を出した後の投球がしっかりしている。三振取ったりね」とうなずき「十分(プロで)できます。いい素材です」と、能見2世と称される左腕にほれ直したようだった。

 外れながら「ドラ1」が過大評価でないことは証明した。もともと岩貞は前向き思考。調子が悪いときも「昔を見ても直らんから」と、常に前向きな姿勢で野球に取り組んできた。今日のこの悔しさも大きなエネルギー。岩貞は4年間で培った確かな自信と最後の悔しさを胸に大学野球に別れを告げ、新たなスタートを切った。【松本航】