インタビュー
20歳の右腕が球界を背負う/新春ロングインタビュー
投手陣の柱としての期待を背負ってマウンドに登る3年目。ダルビッシュの頭には、すでにシーズン終了までの青写真が描かれているかのようだった。開幕投手やエースという呼び名に興味は示さず、招集されてもおかしくない08年北京五輪も、まずは封印した。だが新庄氏の引退、西武松坂らのメジャー移籍で「弱体化」が叫ばれる日本球界を背負う覚悟は見せた。野球だけではない、20歳の素顔や本音をロングインタビューで迫った。【取材・構成 北尾洋徳】
開幕投手はこだわりません
--今季の目標は
- 昨年もさまざまなシーンに登場したダルビッシュ。今年の更なる飛躍を笑顔で誓った
ダルビッシュ 「昨季の終盤と同じようにファンの人と一緒になって戦いたい。それがシーズンの初めから終わりまで続けばいいかなと思います。連覇を期待されるのでしょうが、ファンと一緒に戦うほうが重要ではないのでしょうか」
--昨季はプレーオフ、日本シリーズで「開幕投手」を務めた。今季の開幕投手に対する意識は
ダルビッシュ 「開幕がどこだと思っているんですか(笑い)。千葉マリンですよ。千葉マリンでは、あまり良いピッチングをした覚えがないんです(4試合0勝2敗)。なぜ札幌ドーム開幕ではないんですかね。ただ、あまり開幕投手にこだわりはありません。シーズンのどこから投げても、投げ出したら、そのシーズンを頑張るだけのことですから。最初の試合だろうが違う試合だろうか、気持ち的には関係ありません」
--それでも開幕投手に指名されたら
ダルビッシュ 「指名されたら…それは行きますよ。監督は自分でこうだと決めたら変えない人ですし。行けと言われたら当然、行きます」
最高のシーズンも序盤は重圧に
--昨季を振り返って
ダルビッシュ 「日本一になれて、アジア一になって、最高のシーズンでした。シーズン序盤はなかなか勝てなくて、相当なプレッシャーもかかっていました。正直なところ苦しかったです」
--プレッシャーから解放されたのは、いつ
ダルビッシュ 「ポンポンポンポンと勝ち始めて、その辺から。考え過ぎなければ、いつかは勝てるんだ、と思えるようになりました」
--9月27日のレギュラーシーズン最終戦(対ソフトバンク)では初の救援登板を果たしたが
ダルビッシュ 「(リリーフでの登板は)楽しかったです。1点差の登板で、1点でも取られたら先発の勝ちも消えるというプレッシャーはありました。それでも楽しかった。スタミナを意識することなく、思い切り投げられました」
--今後リリーフをやりたいという気持ちは
ダルビッシュ 「ないですね。武田(久)さんを見ていたら、とてもあそこまではできない。シーズン後半は、すごい疲れていたし。リリーフは厳しいと思います」
--救援陣につなげば何とかなるという意識は
ダルビッシュ 「ありました。7回…、いや最悪6回まで投げれば、岡島さん、武田(久)さん、マイケルさん、すごいリリーフ陣がそろっていましたから。先発陣はすごい楽だったんじゃないですか」
泣きました…
--昨季で印象に残ったことを3つ挙げるとしたら
ダルビッシュ 「まず1番は日本シリーズでの優勝が決まったとき。マウンドにいるマイケルさんに向かって走っていったら、ガッツポーズしている姿が目の前にあって。帽子を脱いだのか、脱げたのか分からないですが、それがすごく面白くて(笑い)。あとはパ・リーグ優勝。思い切り泣いていました。もう1つは最終戦ですかね。勝てば1位通過でプレーオフ進出がかかった一戦。マウンドに行く途中当たりで(歓声が)ウワーとなって、だんだん(気分が)上がってくる。応援で上げられたような感じで。すごい感動しました」
--昨季終盤には自己最速の153キロをマーク。見てないところでウエートトレーニングを積んでいたのでは
ダルビッシュ 「あまり人が見ているところだと、集中してできないですから。シーズン後半は(体つき)だいぶ変わりましたね。テレビ見ていて感じました」
--08年北京五輪のアジア予選が今年11月に始まる。日本代表入りについては
ダルビッシュ 「11月はゆっくりしたいですね。ただ、選ばれたら断るわけにはいかないのではないですか。すごいこだわりを持っている人もいますけど、特にこだわりはありません。世界と戦うというのがいいのかな? 五輪を日本でやるのなら出たいですけど、海外はいいですね。体調整えるのが、ただでさえしんどいのに、海外にいったら余計じゃないですか。日本で次の年へ向けて集中したいのですが(出場は)分からないですね」
少しだけ変えます。かぶりものは…
--変化球を増やすことは
ダルビッシュ 「チェンジアップは投げたいと思います。気が向いたらキャンプから取り組もうと思います」
--新庄氏の引退、西武松坂らがメジャー移籍したが、プロ野球人気は
ダルビッシュ 「目玉の選手がけっこう抜けましたからプロ野球の人気がどうなるのかな、という気持ちはあります。ただ、今いる人で工夫してやれば人気が落ちるとは思いません。選手全員、全球団の人がそういう気持ち(危機感)を持ってファンサービスすれば問題ないと思います」
--香水の発売、雑誌への露出で「ダルビッシュ流超満員プロジェクト」もスタートしたが、今後の展開は
ダルビッシュ 「ダルビッシュシートもいいですね。シートを取って、自分が投げるときに、お金はかかるかもしれないが、入場した人に何かを配ったり。下敷きなどでもいいから」
--かぶり物などパフォーマンスは
ダルビッシュ 「(森本)稀哲さんがやると言って「一緒にやれ」と言われたらやりますよ。(グラウンドレベルでのファンサービスは)1週間に1度の登板では(回数が少なく)きついですね。ファンとベースランニング対決とか、ホームラン競争をやろうかな」
--新人に対して、やってあげたいことなどは
ダルビッシュ 「今季で3年目で、そんなにしてあげられることはないと思います。自由に生きて欲しいですよね、ダースとか植村とか。ダースとは会いました。いきなり菅野(光夫鎌ケ谷・勇翔)寮長が『ダースがダルに会いたい』と言っている、と。びっくりするじゃないですか。だから緊張しました(笑い)」
変わらないこともあります
--エースと呼ぶ声も聞こえるが
ダルビッシュ 「やめておきましょう。そういうの(呼び方)は」
--2年間生活して北海道には慣れたか
ダルビッシュ 「慣れる慣れない、というのは最初からなかったです。でも生ものが駄目ですね。少しだけなら食べられるのですが。そういえば最近アウトドア派になったんですよ。外に出る機会が増えました。服も買いに行っています。テレビを見てボーとすることも少なくなりましたね」
--20歳になって変わったことは。例えば女性観などは
ダルビッシュ 「女性観はたいして変わらないですね。でもファッションに気を使うようになりました。今、前に着ていた服を見たら、あり得ないと思いますもん。前はボロボロのスポーツバックで遠征していましたからね(笑い)」
(07年1月1日付、日刊スポーツ北海道版紙面から)
- <衣装協力>
- (株)丸井今井札幌本店、スーパーメンズ、リーバイス
- <靴>
- 「シューズ ジョージズ」(電話011・242・4550)
- <スタイリング>
- 小川弥生
- <ヘアメイク>
- 畠山貴子
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