第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、14日の2次ラウンド第2戦で、侍ジャパンがキューバに8-5と競り勝った。日本は15日のイスラエル戦に勝てば全勝で米ロサンゼルスで行われる準決勝へ進む。

 内川は打球の行方を見て、ただただ祈った。「捕ってくれ!」。同点で迎えた8回1死一、三塁のチャンス。この日も2安打1打点と、ラッキーボーイの活躍が続いていた小林に代わる代打の切り札として送り出された。右翼へ打ち上げた飛球は、捕球されなければファウルだったが、相手右翼手が捕ったことで貴重な決勝犠飛となった。「今日はあそこが勝負だと思った」という指揮官の決断に応えた。

 「得点圏でいくよと言われていた。4回くらいから準備していた。小林が2本打っている中での代打だったので気持ちが入った。小久保さんも勝負に出たんだなと感じた。欲を言えばヒットだが、何でもいいのでいってくれと思った」

 東京入りした1次ラウンド初戦前日の6日。内川は散髪に出向き、頭の両サイドを刈り込んで戦闘モードへとスイッチを入れた。だが、2次ラウンド初戦の12日オランダ戦で初安打が出るまで、慣れない代打の役割に、なかなか気持ちも乗り切らず「出番があるのかどうかも分からないし…」と、表情も曇りがちだった。

 それでも日本の代表として、自らの走塁ミスで準決勝で涙をのんだ前回大会の悔しさを忘れることはなかった。「WBCは僕の人生を変えた大会。今回こそ世界一になりたい」。過去の2大会で天国と地獄を味わった男としての責任感がバットに乗り移った。

 小久保監督も「ラッキーボーイに代打は勇気がいったが、切り札でいった。全身全霊でやってくれて勇気づいた」と、大役を全うしたベテランをたたえた。5試合目で役目を果たせた内川。世界一への重要なワンピースが加わった。【福岡吉央】