「RIZIN46」(29日、有明アリーナ)は、メインイベントのRIZINフェザー級王座戦で王者・鈴木千裕(24=クロスポイント吉祥寺)が、挑戦者・金原正徳(41=リバーサル立川ALPHA)を下して初防衛を成し遂げた。

個人的にはこの試合だけで行く価値のあった大会だったと思うが、セミファイナルでは元リオ五輪レスリング銀メダリストの太田忍(30=THE BLACKBELT JAPAN)が元RIZINフェザー級王者の牛久絢太郎(29=アメリカン・トップチーム/K-Clann)を相手にどう猛なファイトを展開。相手のアキレス腱(けん)を踏みつけたり、これまでよりも「怖さ」を感じさせる強さで存在感を強烈にアピールした。

その他にもいろいろな出来事があったが、時間の関係上、紙面やネットに掲載仕切れなかったトピックについて、試合ごとに箇条書きしてみた。

▼第1試合 ○高木凌 1R4分4秒KO(グラウンドパンチ) ×西谷大成

・西谷選手は精神的に不安定だった年末年始にかけて「闇谷」というニックネームをつけられた。この日、記者から「勝って“闇谷”とおさらばしたかったのでは?」と聞かれると「(闇の)深淵(しんえん)に行ってしまうかもしれません」と苦笑いしていた。

▼第2試合 ○イルホム・ノジモフ 2R2分39秒TKO(グラウンドパンチ) ×山本空良

・「あなたのことを撮影した女性カメラマンが『ハンサムだから女性ファンが増えると思う』と言っていたが」と聞かれたノジモフ選手は「それはありがたいですけど、私はもう結婚していて妻もいます。私の中で1番大切な女性は妻です」とまじめに答えていた。

▼第3試合(ベアナックル戦) ○篠塚辰樹 1R1分33秒KO(右ストレート) ×ジャスティン・マルチネス

・実は今大会でオープニングセレモニーの時など、声援の多さでは1、2を争う人気だった篠塚選手。見た目はこわもてだが「めちゃくちゃ力になったっす。なんか最近、結構応援してくれる人が多くなってきて、いろんなメッセージをくれたんでうれしかったですね」。

▼第4試合 ○ビクター・コレスニック 3R判定3-0 ×中原由貴

・コレスニック選手は試合後、「新居すぐる選手が私の戦いをビデオで見てくれて、ぜひ戦いたいという申し入れがありました」と明かした。

▼第5試合 ○“ブラックパンサー”ベイノア 3R判定3-0 ×井上雄策

・RIZIN榊原信行CEOは大会の総括でこの試合について言及し「ベイノア選手と井上選手は今のままだったら2度と使わないです」と明言。2人の1本、KOを狙わない姿勢を非難した。井上選手も試合後「イベントの足を引っ張るような形にしてしまった」と反省していた。

▼第6試合(日韓対抗戦) ○倉本一真 3R判定2-1 ×ヤン・ジヨン

・倉本選手は「チーム日本」について「最初はヤン・ジヨン選手とやれるというところで『やっと来たな』と思ってたんですけど(中島)太一と(神龍)誠と出会うたびに『一緒に頑張ろうな』って。そういうのが芽生えてきました。2人が強いのは分かってるんで、負けてられない気持ちが1ランク上がった。誇りを持って戦えました」。

▼第7試合(日韓対抗戦) ○神龍誠 1R4分29秒1本(肩固め) ×イ・ジョンヒョン

・神龍選手は前日のフェイスオフで自分を小突いてきたジョンヒョン選手と試合後にはノーサイドで抱擁。会見では「対戦前は突き飛ばされたりしてるんで『このクソガキ絶対やったる』って思ってたんですけど、試合後、良いやつでした」と笑っていた。

▼第8試合(日韓対抗戦) ○キム・スーチョル 2R0分6秒KO(グラウンドパンチ) ×中島太一

・8月に第2子が生まれるという中島選手は悔し涙を流しながら「ずっとサポートしてくれた」という夫人に感謝していた。

▼第9試合 ○太田忍 3R判定3-0 ×牛久絢太郎

・この試合が終わったらガールフレンドとグアムに行くという太田選手は、前日28日の計量時に榊原CEOに「勝ったらボーナス」と要求するも一蹴されていた。この日の試合後、「何とかこの後、お会いしてもうちょっと押そうかなと思います」と粘り強く交渉することを示唆していた。

▼そしてメインイベントの第10試合 勝った鈴木選手も、負けた金原選手も、筆者からすれば2人ともヒーローだった。鈴木選手は「べらぼうに強い」「底抜けに明るい」「言ってることがシンプルで分かりやすい」「常に正しいことをしようとしている」…等、そのルックスも含めてアメコミから抜け出してきたような誰もがあこがれ、好きになるヒーローだ。

一方の金原選手は、こんな父ちゃんがいたらいいなっていうマイホーム・ヒーロー。試合の朝、長男くんには「勝負の世界っていうのは勝つこともあるし、負けることもある。でも精いっぱいやっていれば、誰かが見てくれる。だからパパの頑張ってる姿をちゃんと目に焼き付けてくれ」と伝えて、家を出てきたという。パパの勇敢な姿は子供たちをはじめ、家族、ファン、みんなが分かっているはず。去就については明言しなかったが、今はまず、疲れを癒やしてほしい。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

“ブラックパンサー”ベイノア対井上雄策 井上(左)に判定勝ちしたベイノア(撮影・江口和貴)
“ブラックパンサー”ベイノア対井上雄策 井上(左)に判定勝ちしたベイノア(撮影・江口和貴)