特等床山の床佐渡(佐渡ケ嶽)が11日に65歳の誕生日を迎え、今場所限りで46年間の床山人生に幕を下ろす。68年初場所に力士として入門。本名「安田」のしこ名で序二段まで上った。だが1年後、部屋の床山の引退が転機になった。最初は若い衆が交代で結っていたが「俺が器用だから、だんだん1人でやるようになった。稽古も休みがちで、69年7月に理髪店でまげを切ったよ」。床山ストーリーは、こうして始まった。

 50年以上幕内力士の絶えない名門で、そうそうたる顔ぶれのまげを結ってきた。先代佐渡ケ嶽の横綱琴桜、大関琴風、琴光喜、琴欧洲、琴奨菊-。一番の思い出には真っ先に先代を挙げ「とにかく怖かった」と言う。決して笑顔を見せず、稽古場ではいつも泥まみれ。「1日50、60番は当たり前だった。最近はすぐやめるだろう」。歴史を見てきたからこそ、ぼやいた。

 今場所は佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の長男、琴鎌谷が入門。時は流れていく。お別れ会は名古屋場所で引退した床安(65)と6月に済ませ、実感は「まだ全然ないなあ」。だが場所前に風邪をひいてしまい「本当は大関のまげ、やりたいんだけどね」と寂しがった。その琴奨菊は1敗をキープ。引退の手土産に“最後の大関”の初の賜杯を願っている。【桑原亮】