新調整法で結果を残す。WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)が19日、前WBA同級王者河野公平(36=ワタナベ)を迎え撃つ4度目の防衛戦(30日、有明コロシアム)へ、横浜市内のジムで練習を公開した。拳、腰とケガが続いた経験から、練習法を工夫。素手での打ち込み、スパーリング回数の削減を試み、日本人対決に備える。

 コーナーポストに素手の両拳が突き刺さっていた。リング内でシャドーをしていた井上がおもむろに、薄い緩衝材が巻かれたポストにパンチを打ち込んだ。「拳を強くするためです。今後痛めないように」。何げない動作は、続けてきた常識外の鍛錬の一環だった。

 拳を痛めるからこそ、クッション代わりにグローブ、バンデージを巻くのが通常。裸の拳でサンドバッグを打つのはご法度にする指導もある。ところが…。強打ゆえに拳を痛める経験を持つ怪物は逆をいった。自宅の練習場にもあえて硬い新調のサンドバッグをつるし、練習ごとに打ち込んだ。強化のため、挑戦を恐れなかった。机の角などにも拳を当てて、普段から意識した。最初は痛み、赤く腫れたが、いまではその頑強さに自信を持つ。

 腰痛に襲われて苦戦した9月の防衛戦を顧みて、スパーリングも変えた。通常120回前後を70回ほどに。トレーナーの父真吾さんと1回ごとに細かくテーマを設定し、量より質へ。「前回はやり過ぎた。今回は再発しないように。でも内容は濃い」。1回の練習も最大5回に抑えたが「体力は問題ない」と強調した。

 新たな試みは「この先のことを考えて」と、来年に見据える米国進出を念頭に置く。当然、年末の河野戦を軽視しているわけではいない。ここで元王者のくせ者を圧倒できれば、その先を明るく照らす。「一方的な展開で何もさせないで勝つ」。調整成功は、豪快な勝利で証明する。【阿部健吾】