<新日本:大阪大会>◇27日◇大阪府立体育会館◇6000人

 全日本の武藤敬司(45)が8年4カ月ぶりにIWGPヘビー王者に返り咲いた。古巣新日本のリングで王者中邑真輔(28)に22分34秒、月面水爆から3カウントを奪った。自身4度目の獲得で、全日本所属選手としては05年の小島聡以来2人目の同王座奪取。試合後は「(ベルトを)プロレス界の活性化につなげたい」と明言。団体の垣根を越えた防衛戦ロードを予告した。

 新日本のファンから武藤コールが沸き起こった。新王者は信じられないという顔で、おどけてベルトを指さした。3061日ぶりに腰に巻くと、定番の「プロレスラブ」のポーズで歓声に応えた。「プロレス界の活性化につなげたい。オレがベルトを取ったことで、大きくうねってほしい」と45歳の新王者は笑った。

 古傷にひざに加え、腰や肩にも痛みを抱えていた。「五体老化していた」。17歳下の王者に気力で立ち向かった。低空ドロップキックやドラゴンスクリューで右足を破壊し、シャイニング・ウィザード3連発から月面水爆でフォールを奪った。「引き出しはいっぱいあると言ったが、実際に開けてみたらカラだった。最後に残っていたのはスピリット。魂だけだったよ」。

 通算獲得タイトルを33に増やした。あの故ジャイアント馬場さんの最多記録34回にあと1に迫った。衰えを知らない男を支えているのが、過去の自分へのライバル心。今も全盛期といわれた90年代の自分を目指して練習を積んでいる。「若い選手の肉体もうらやましいが、何と言っても過去の自分の肉体に一番ジェラシーを感じる」と日ごろから話していた。

 今回は別の刺激もあった。今月に入って、ある女性から手紙が届いた。昨年4月に白血病を宣告された武藤ファンの交際相手が、武藤の活躍を励みに病気を克服し、5月3日に挙式が決まったという。「レスラー冥利(みょうり)に尽きるね」と武藤はさらにモチべーションを高めた。

 新日本の至宝ベルトを獲得したことで、目指すプロレス界の「1人大連立」構想が大きく前進する。今後は団体の垣根を取り払って防衛戦を行うことで、業界の活性化も狙う。「借りは返す」とだけ言い残した中邑に対して「またやってみたいね」。29日の全日本・名古屋大会での世界タッグ選手権でさっそく王者の貫禄(かんろく)を示す。【大池和幸】