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 GP>◇28日◇横浜アリーナ◇K-1ヘビー級王者決定トーナメント◇1万328人

 K-1重量級初の日本人王者が誕生した。前田慶次郎(22=チームドラゴン)が、トーナメントを制し、2代目同級王者となった。当初はリザーブファイトに出場予定も、欠場者が出てトーナメント出場。初戦ではカウンターが決まって1回KO勝利でスタミナ温存に成功と、運も味方に付けた。奇抜な髪形で、居酒屋でアルバイトしながら「有名になる」が目標だった男が、K-1の新星となった。

 優勝した前田が、一番驚いていた。「いや~、勝っちゃった」。決勝を延長戦の末に制し、日本人初の重量級王座を獲得。WBC2連覇を決めたイチローの言葉をもじって「(自分も)イチローと思って。いいとこ取りですね。(運が)味方してくれたというか、最高です」と笑った。

 当初はリザーブマッチに出場予定だったがトーナメントの2選手が欠場。4日前に出場権を得た。1回戦ではマヌーフの攻撃に後ずさりしながらも、踏ん張って右のカウンターを決め、2分2秒で決勝へ。対照的に初戦から延長戦を戦ったサキは、途中からスタミナ切れした。前田は焦らず、粘り強く仕掛け続けた。「気持ちを見せたいだけだった。2日前には怖くて泣きそうになって、逃げ出しそうになったけど、来て良かった」。運だけではない。攻めの姿勢を貫いた先にベルトが待っていた。

 トライアウト出身の前田は、今でも時給1000円で週3回、居酒屋でアルバイトをしている。優勝賞金500万円を手にして「週2回に減らそうかな」とおどけた。初代王座をはく奪されたバダ・ハリとの対戦については「無理でしょ」と対戦を拒んだのは、もっと強くなってから戦いたいとの向上心があるから。「王者を背負うつもりはない。一挑戦者です」。今回は「輝くかどうかがテーマ」と、右側頭部に「流れ星」を刈り込んでいた。強烈な光を放つ日本重量級の新星が誕生した。【浜本卓也】