プロボクシングのWBC世界フライ級王者・内藤大助(34=宮田)が、5度目の防衛戦を中国・上海で行うことが21日、分かった。5月26日に、同級14位の熊朝忠(ション・ザオゾン=26)の挑戦を受けることが決まった。23日に東京、24日には上海で、それぞれ発表会見を行う。中国人の男子選手による世界王座挑戦は史上初。完全アウェーの中で、日本の国民的王者が中国の新星に胸を貸すことになった。

 新たな相手は、指名挑戦者でも、亀田兄弟でもなかった。内藤は昨年12月、山口真吾(渡嘉敷)を破って4度目の防衛を果たした。それと前後するように、陣営は次の防衛戦の相手をリストアップ。その中で、WBC本部が人口約13億人の巨大市場を持つ隣国に興味を持っていることを知り、中国に目を向けた。

 宮田博行会長らが年明けから数度、上海へ渡り、中国のプロモーターやWBCと交渉。WBCから承認を受け、この日までに条件面でほぼ合意した。発表は23日に東京、24日に上海でも行われ、ともに内藤が出席する。男子プロボクシング史上初の日中世界王座戦が実現。関係者によると、内藤は歴史的対決について「国民の期待に応えますよ」と話しているという。

 90年のアジア大会を契機に解禁されるまで、ボクシングが禁じられていた中国だが、昨年は北京五輪で初の金メダルを獲得。プロでも女子で初の世界王者が生まれ、ボクシング熱は高まっている。人気をさらに高めるため、WBCは中国国民の関心を集められるビッグマッチを計画。「白羽の矢」を立てられた形となったのが、中国人にとって特別な感情がある日本人の王者、内藤だった。

 内藤には指名挑戦者ポノムルングレック(タイ)戦など、ランク上位選手との指名試合が義務付けられていた。だが、中国の試合が優先され、指名試合は宙に浮いた状態という。関係者は「次は指名試合ではなく、WBCからの『指令試合』。こちらの方が強制力が強いようです」と説明する。陣営にとっては、多くのスポンサーが付く国内興行とは違い、赤字も覚悟の上だが、WBCの強い要請に応えるつもりだ。

 相手の熊は、デビューから約2年半でWBC14位に入った新鋭。身長155センチと小柄ながら、天性のセンスと闘争心あふれるスタイルから、中国では「小タイソン」と呼ばれている。KO率も57・1%と、内藤にとって油断できない相手だ。しかも会場は上海で、内藤には容赦ないブーイングが浴びせられることは間違いない。完全アウェーの環境で、内藤が「歴史的勝利」を挙げることができるか注目される。