WBC世界フェザー級王者粟生隆寛(25=帝拳)が、初防衛戦であえて1位指名挑戦者を選んだ。同級1位エリオ・ロハス(26=ドミニカ共和国)と、7月14日に東京・JCBホールで対戦することが、11日に発表された。陣営では格下相手と交渉の余地もあったが、粟生が「弱い相手に勝っても意味はない」と選択した。日本ボクシング界のニューリーダーを目指し、いきなり強敵相手の難関に臨む。

 初防衛戦相手を決めるのに、本田会長は「誰とやりたい?」と粟生に尋ねた。きっぱりと「強い相手」と言い切ったという。悲願の世界王座についた後の初防衛戦。オプション契約などの絡みもあるが、格下の楽な相手を選ぶのが通例。陣営でも下位ランクと交渉の余地もあったが、粟生の強い意志を受けて、あえて1位とのマッチメークとなった。

 粟生は「15位まで弱い相手はいない。WBCで一番弱い王者」と控えめに話す。一方で「弱い相手に勝っても意味ない。強い相手ならいい試合ができ、また成長できる。試合までの4カ月でまた成長したい」とも強気に話した。

 アマ6冠でプロ入りも、昨年は引き分けに世界初挑戦で初黒星の挫折を味わった。3月の王者ラリオスとの再戦では、見事に雪辱して王座を獲得。苦労も成長へつながった実感がある。

 ロハスは世界初挑戦だが、01年世界選手権で銅メダルを獲得した。米東部を拠点に、あのドン・キング・プロモーターと契約。左フックに右ストレート主体でアマ出身も好戦的。粟生は「2年前にテレビで見たが印象ない」という、未知の強敵となる。

 浜田代表も「話題先行ではごまかせない、実力の世界。中身で勝負。これからは引っ張っていく立場でもあるし」と後押し、期待する。小学生で誓った念願の緑のベルトが先月届いた。今も枕元に飾り、暇さえあれば磨く「誰に渡せない宝物」。12日から宝物をジムに預け、まずはWBC世界バンタム級王者長谷川穂積(28)と千葉・成田市で走り込む。【河合香】