<プロボクシング:WBC世界フェザー級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇東京・後楽園ホール

 王者粟生隆寛(25=帝拳)が強敵にはね返され、初防衛に失敗した。自ら選んだ指名挑戦者の同級1位エリオ・ロハス(26=ドミニカ共和国)との対戦。初回からスピードあるパンチで先手をとられ、着実にポイントを奪われた。7、9回に左ストレートを浴びせたが、3から8ポイントと大差の0-3で判定負けを喫した。粟生は17勝(8KO)2敗1分け、初挑戦で王座獲得のロハスは21勝(13KO)1敗となった。

 勝者は試合終了のゴングと同時に、リングに突っ伏した。敗者は採点発表と同時に、拍手で相手をたたえた。悲願の王座を獲得した前回と全く同じ光景。ただし、勝者は粟生でなかった。あえて選んだ1位の指名挑戦者との初防衛戦。結果は完敗だった。

 初回からポイントを奪われた。ハンドスピードが速いロハス。左ジャブ、右ストレートをもらい続けた。先手を取られた粟生は見合う場面が続き、手が出ずに攻められない。

 前回の6種類に加えて変則3種類のカウンターを磨いてきたが、その見せ場もつくれず。「うまかった。カウンターを狙っていたが、思いのほか出てこなかった。パンチのテンポが速く、リズムもアマ独特で」。脱帽するしかなかった。

 7回30秒すぎに左ストレートがクリーンヒットした。ロープに詰めてワンツーも浴びせたが、残り2分近くをクリンチで逃げ切られた。8回の公開採点でジャッジ3人ともロハスのリード。もう攻めるしかない。9回も左フックを見舞うが、ここもあとが続かず。

 粟生は減量に苦しんだが、ロハスはスピードを最優先に、計量でリミットを700グラム下回った。その足、スピードは最後まで衰えない。粟生は高校6冠のアマエリートだったが、ロハスは01年に世界選手権で銅メダルを獲得したトップ中のトップアマ。田中トレーナーは「日本の高校と世界のトップですから」と話していた。そのキャリアの差が現れた。

 初防衛戦だけに、大半はランキング下位の相手を選ぶ。粟生も交渉余地はあったが、自ら指名挑戦者を希望した。そのロハスは日本でのリベンジさえ受け入れると言った。「もちろんやりたいが、もっと強くなる必要がある」。粟生は一からの出直しを期した。【河合香】