WBC世界バンタム級王者長谷川穂積(29=真正)が日本ボクシング界の歴史を動かす。WBO(世界ボクシング機構=日本未公認)王者フェルナンド・モンティエル(31=メキシコ)との11度目の防衛戦は、30日にゴング。日本ボクシングコミッション(JBC)はこの試合内容により、WBOなど日本未公認の世界メジャー団体王者と、国内世界王者との統一戦を近い将来に認める方針を明かした。長谷川は「査定試合」勝利でさらなるビッグマッチに道筋を作る。29日は都内で前日計量が行われ、WBC世界スーパーバンタム級王者西岡利晃(33)とともに一発パスした。

 計量をリミット体重から100グラムアンダーでパスした長谷川は、WBO王者モンティエルと握手して好ファイトを誓い合った。スポーツドリンクで渇きを潤すと、顔に生気がみなぎる。「あとは思いっきり暴れるだけ」。準備は整った。

 そんなV10王者が「革命」を起こすかもしれない。JBCの安河内剛事務局長は「この試合は大きな意味を持つ」と力説。現在はJBC未公認である世界メジャー団体王者との日本での対戦を、王座統一戦に限って正式に認める契機になる可能性は十分という。

 現在プロボクシングには4つの世界メジャー団体があり、JBC公認はWBCとWBAのみ。王者乱立を防ぐため、WBOとIBF(国際ボクシング連盟)は未公認だ。この試合に長谷川が勝ってもWBO王座は移動しない。ただ近年はWBOとIBFも勢力を増しており、王者にはマニー・パッキャオ(フィリピン)ら世界的強豪がいる。

 もちろん統一戦容認のハードルはある。ビッグマッチを成立できるプロモーターの存在。一部で反対する各地区協会の容認。そして重要なのが、出場に見合う選手であることだ。「単に弱い選手を日本に連れてきて『統一戦を認めろ』というのは通用しない。今回も長谷川だから(王者対決を)やれる価値がある。今後に向けて、モンティエル戦は勝ち負けより、内容が重要になる」と安河内氏。これまで団体の壁から不可能と思われた夢のカード実現に、期待は膨らむ。

 計量前、長谷川は30日の会場となる日本武道館に立ち寄り、柔道男子の全日本選手権を観戦。試合前に交流を深めた穴井隆将(25)の試合は時間の都合で断念したが、試合直前でもリフレッシュする余裕があった。放送する日本テレビは注目度の高さを考慮し、長谷川戦を急きょ生放送することを決めた。

 「強い相手だからこそ、自分も強くなれる。どんな試合になるか、自分でも楽しみ」。時代の先駆者となれるか-。その双肩に、日本ボクシング界の未来も託された。【大池和幸】