WBA世界スーパーフェザー級5位ロイ・ムクリス(23=インドネシア)が亡き恩師に、同級王者内山高志(30=ワタナベ)からの王座奪取を誓った。20日の世界戦に向けて16日、都内で練習を公開。直前の会見中に突然号泣し、床に突っ伏した。

 7月24日、マネジャーだったテムジン・ランビン氏がB型肝炎のため30歳で急死。14歳で両親を火事で亡くしたムクリスは、15歳でテムジン氏の父で現トレーナー兼マネジャー、スタン氏の養子となっていた。今回の試合がほぼ決定していた直後に、義兄であり相棒が突然死。一緒に来日したテムジン氏の妻アンナさんが会見で、「亡くなった夫にムクリスを世界王者にすると約束した。勝ったらベルトを夫の墓に持っていきたい」と言うと、感情があふれ出した。

 ムクリスは「アイムソーリー」とまずは報道陣に謝罪。そのうえで「彼の分まで頑張りたい。絶対に勝つ」と真っ赤な目で語った。公開練習では軽めのスパーリングを2回行っただけ。戦前の評判は15戦全勝の内山有利と言われている。だが、いくつもの悲しい出来事を乗り越えて初の世界戦をつかみ「内山は強い。でも私は誇りを見せたい」と話す挑戦者の執念は、侮れない。【浜本卓也】