<新日本:G1クライマックス>◇14日◇東京・両国国技館◇1万1500人

 中邑真輔(31)が8度目の挑戦でついにG1初制覇を果たした。鈴木みのる(43)を破ってBブロックを1位で突破。Aブロックを制した内藤哲也(29)との優勝決定戦で、20分19秒、ボマイェからの片エビ固めでフォール勝ちした。デビュー翌年の03年に初参戦、その後、IWGPヘビー級王座に3回就きながらも届かなかった、真夏のシングル最強決定戦の頂に9年かけて到達した。

 求め続けた栄光の座に、ついにたどり着いた。変型ランドスライドから、内藤に集中攻撃を受けた左ひざで必殺技のボマイェをさく裂させた。20分を超える激闘に終止符が打たれた。中邑は寝転がって勝利の余韻にひたった。デビュー2年目の初参戦以来9年。常に優勝候補に挙げられながら逃し続けてきたG1を制覇した。

 「ありがとう、しか思いつかない。うれしい。真っ白だ。思ったより長い時間がかかった。他人にとってはまだ9年。おれにとってはもう9年。プロレスはやればやるほど難しい。プロレスが一番すげぇんだ」

 デビュー以来、新日本の主役を務めてきた。IWGP王座はプロ2年目の03年に初奪取してから3度ベルトを巻いた。しかし、03年から出場しているG1には、なぜか手が届かなかった。昨年まで8年間で7度出場。09年の準優勝が最高位。「どうしても頂点に届かない。オレには夏に縁がないのか」。最近はその苦悩が、逆に過度の気負いになっていた。

 転機は今年6月に訪れた。同5月にIWGP王者の棚橋弘至に挑戦して敗れ、6月に1カ月間、メキシコに単身で遠征した。1人で重い荷物をかつぎ、航空機はエコノミークラスの列に並んだ。デビュー2年目から王道を歩き続けた男には初体験だった。メキシコでは髪をモヒカンに刈り上げ、マスク姿で入場。空中殺法を駆使する現地のプロレスに、勝負度外視で応じた。「楽しむために行ったんだ。刺激を受けてきた」。プロレスを楽しむという原点に戻って帰国した。

 今年のG1は最後まで気負いはなかった。「楽しめたよ。おれ流の空気をファンにも楽しんでもらえたと思う」と笑った。この優勝でIWGP王者の棚橋に再挑戦する資格を得た。「もう少し余韻にひたらせろよ。9年待ったんだから」と言いながらも「棚橋弘至、かかってきなさい」。昨年5月に失った王座再奪取へ、再び闘志をむき出しにした。【小谷野俊哉】