<プロボクシング:WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇19日◇韓国・済州島

 王者の亀田興毅(27=亀田)が、自身初のアウェー防衛戦で大苦戦した。地元の応援に勢いづく同級14位・孫正五(32=韓国)の勢いを止められず、逆に慣れないリングでバランスを崩して10回にはダウンを許した。それでも効果的な連打でポイントを稼ぎ、2-1の判定で辛くも勝利。日本人の現役王者では単独トップ、日本歴代4位タイ記録の8度目の防衛に成功したが、今後については「白紙」と反省した。

 最後まで波に乗れなかった。興毅が敵地で苦しめられた。2回までは手数も多く、効果的なボディーブローを繰り出したが、3回以降、詰め寄る孫のパンチをもらった。中盤、5連打などで盛り返したかと思われたが、10回には左フックを浴びて左手をキャンバスにつきダウンと判定。06年8月のランダエタ戦以来、人生2度目のダウンを喫した。終盤、動きが止まった孫に反撃し、やっとの思いでつかんだ判定勝ちだった。

 興毅

 効いてないパンチが1発あっただけで声援が違うし、アウェーやな。自分もリングに上がってからぴりっとせえへんかった。原因がみえない。これも含めて実力やけど。

 興毅は渡辺二郎、西岡利晃、三浦隆司に続く、日本人4人目の海外防衛となったが、これまで日本人王者の海外防衛戦は4勝8敗と大きく負け越し。やはり敵地では予想外のことが起きた。リングがへこむ部分があり、興毅も「(セコンドの)大毅に気をつけろと言われた場所でバランスを崩して滑った」と明かした。採点方式も通常の1点刻みではなく、中南米やタイ、韓国などで採用される0・5点刻みのハーフポイント制に変更されたが、王者陣営は知らされていなかった。興毅は「相手の泥沼にはまった。敵地でやれる自信はあったから、う~ん」と顔をしかめた。

 敵地の舞台裏は試合前から混乱が続いた。当初は10月の開催予定が、韓国側のミスで興行運営が進まずに11月に延期。日韓テレビ局による中継日程の調整もあり、興毅の誕生日17日以降にずれ込んだ。「本当なら誕生日前にやるはずだった」と興毅。会場も当初は3000人以上収容の済州コンベンションセンターで開催されるはずだったが、韓国サイドの不手際でチケット販売が伸びず、約1000人収容の済州グランドホテルに変更。チケット販売は同ホテル内にあるカジノのバックアップをもらい、ようやく開催にこぎつけた。

 現役の日本人世界王者ではトップのV8防衛となった興毅は、これで世界戦勝利数を12に伸ばした。通算14勝で1位の具志堅用高に続き、長谷川穂積と並ぶ歴代2位タイだが、記録よりも首の皮一枚のような勝ち方に満足できなかった。

 興毅

 今後のオレは当面、白紙。プロになって10年、ここまでやってきて、考え直し、見つめ直したい。

 長期休養とも取れる、厳しい言葉を自らに投げかけていた。【藤中栄二】