大相撲春場所(13日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付発表が2月29日に行われ、綱とりとなる大関琴奨菊(32=佐渡ケ嶽)が大阪府松原市の宿舎で会見した。初優勝した初場所後は多忙を極めたが、疲れよりも気力が充実した様子。先代師匠の元横綱琴桜に並ぶ32歳での横綱昇進が懸かるが「今回がラストチャンスではない」と最近の“進化”に自信をのぞかせ、平常心で初めての綱とりに挑む。

 琴奨菊は2度、言った。

 綱とりへの最初の質問に「今回がラストチャンスでもない。肩の力を抜いて、自分の力を出し切ることだけ意識すれば」。再び聞かれても同じだった。「これが最初で最後のチャンスではない。今向き合っていることをしっかりやっていけば、まだまだ来る」。32歳の“高齢”で初めて臨む綱とり。だが、強すぎる思いも、焦りもない。そこに自分への自信が表れていた。

 根拠の1つはトレーニングだった。初場所後は2度の結婚披露宴に加えて、テレビやイベント出演、取材の数々で、1カ月間で丸々休めたのは「1日だけ」だった。だが、合間を縫ったトレでは自己記録を更新。これまで24キロだったケトルベルは、36キロを持ち上げられた。「しっかり基礎体力をつくった。ある程度の自信は…」と隠さなかった。

 もう1つは気力だった。心配される疲労は「本当にない」という。「視野を広げ、いろいろなことを取り入れて力になればと思ってやってきた。それもすべて、勝つため。全然疲労度がなく、気力の方をたくさんいただいた」と強調した。

 春場所で横綱に昇進すれば多くのスロー記録で先代師匠と並び、また上回る。現師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「これも何かの縁。優勝して結婚もして、あとは何をとるか。綱をとるだけ」と言った。琴奨菊も今、先代の言葉をかみしめる。「本当に『地位も名誉もすべて土俵に埋まっている』です」。新たな地位と名誉を、つかめるか。【今村健人】

 ◆琴奨菊が春場所後に横綱に昇進すれば 98年名古屋場所で昇進した第66代の3代目若乃花以来の日本人横綱の誕生で、番付に載るのは03年初場所で引退した貴乃花以来。伝達式が基準となる年齢は32歳2カ月0日で、58年以降初土俵では先代師匠の元横綱琴桜の32歳1カ月29日を上回る最高齢昇進。初土俵から85場所は琴桜と並ぶ昭和以降3位のスロー。新入幕から67場所は琴桜と三重ノ海の60場所を上回る最スローとなる。