取組の途中で手を挙げるべきか、流すべきか-。審判が判断に悩む場面があった。
大関霧島と東前頭筆頭の藤ノ川との対戦でのこと。藤ノ川が右を巻き替えてもろ差しになった直後、左足が土俵の外に出て、蛇の目を踏んだ。
しかし、両者は動きを止めず、目の前の尾上審判長(元小結浜ノ嶋)は手を挙げないまま。最後は、霧島が向正面側に左からの上手投げで仕留めた。場内アナウンスは「ただいまの決まり手は上手投げ」としたが、その後2分9秒後に「決まり手の訂正をいたします。先ほどの一番、上手投げで霧島の勝ちと申し上げましたが、寄り切り、寄り切りで霧島の勝ちと訂正いたします」と訂正のアナウンスがあった。
春場所後の職務分掌で初めて審判部に配属され、初めて幕内後半戦の審判長を務めた尾上審判部副部長(元小結浜ノ嶋)は、藤ノ川の右足が出た場面について「ま、そうですね。そうも見えました」。あえて流したのかという問いには「出たと思っても、動きを止めずに流して、勝負が決まってから手を挙げるようにと聞きました」と説明した。
尾上審判長の判断は間違いではない。だが、微妙な判定でなく、藤ノ川の足は明らかに出ていた。うかつに取組を止めて誤審につながってはいけないが、勝負が決まった時点で確認のための物言いを付けておけばよかった。
NHK中継を見ていた八角理事長(元横綱北勝海)は「外で(足跡が)相当残ってた。あれだけ思い切り出たら、ダメだよな。(足が出た力士は)だいたい力を抜くが、必死になっているから分かんないんじゃない」と指摘。同時に「(その後が)それだけ盛り上がったからいいんじゃない」とフォローした。
この取組を合わせた立行司の式守伊之助は、藤ノ川の足がしっかり見えていた。「見えました。(審判長が)あまりに言わないから、見間違えたかと思いました。『出てませんか?』と(審判長に)目で訴えてました」と振り返った。
好判断だったのは、ビデオ室で決まり手係を務めた甲山親方(元幕内大碇)。藤ノ川の足が出ていたことを確認し、アナウンス係の行司に内線を入れ、決まり手を訂正した。
ただし、場内の観客の多くは事態が分からないため、NHK大相撲中継の解説を務めた琴風浩一氏は放送中「なんで寄り切りというのを言ってあげないとね。上手投げと言いましたが、その前に足が出ていましたので寄り切りに訂正しますと言ってあげないと、ただ変わってもお客さんはあれがなんで寄り切りなのってことになりますよね。そこはちょっと、館内放送も考えた方がいいんじゃないですかね」と指摘した。
もし取組続行後、藤ノ川が勝っていたら混乱が生じていたかもしれない。【佐々木一郎】

