31歳の誕生日を迎えた3日、大相撲の横綱稀勢の里(田子ノ浦)が明るさを取り戻した。2日ぶりに稽古場に降りると、大関高安と計18番相撲を取って11勝7敗。いきなり6連敗したが、中盤以降は自分の「形」に手応えをつかんで圧倒した。報道陣から贈られた特注ケーキに笑みもこぼし、優勝回数を重ねて「強い横綱」になることを誓った。

 34・7度と猛暑日手前まで気温が上がった名古屋。あふれ出る汗の中に、稀勢の里のもやもやも流れ出ていた。「見違えるように良くなってきた。今日は後半から手応えがありましたね、久しぶりに」。充実した表情は何日ぶりか。31歳の誕生日に明るさが戻った。

 左上腕付近が万全ではなく、二所ノ関一門の連合稽古では小結嘉風に2日間で11勝19敗と精彩を欠いた。30歳最後の日となった前日は稽古を休み、休養に充てたほど。2日ぶりの稽古場でも高安にいきなり6連敗し、左のかいなを返されると、思わず「アーッ」と声を上げた。だめなのか…。

 そう思われた直後から、変わった。踏み込みの圧力が増す。左を固め、ねじ込めれば良し。入らずとも、胸を合わせて一気に寄る形を立て続けに見せた。「体が起きてきた」と言い「疲れが取れて、形が決まれば何とかできると思っている。今日は良かった」。最後はぶつかり稽古で高安を7分間も鍛えた。たかぶりの表れか。「いやいや、高安も昨日稽古できなかったから、申し訳ない気持ちでね。高安のために」と笑った。休養はプラスだった。

 報道陣から、自身が表紙のジャポニカ学習帳に模したケーキを贈られると「すごいね。毎年ケーキが進化している。最後はどうなるのかな」と目を見張った。「最後はウエディングケーキ」と言われると「もらえるまで頑張ります」と返し「1つ階段を上ったけど、また新しい階段を上りたい。1つでも多く優勝したいし、強い横綱になりたいというのがある。その気持ちをしっかり持ってやっていきたい」。31歳は、幸先よく始まった。【今村健人】