AKB48の最年長メンバー篠田麻里子(27)が22日、東京・秋葉原のAKB48劇場でグループを卒業した。前日21日に行った故郷の福岡での卒業セレモニーを経て、この日に帰京。ホームタウンで、7年半前のデビュー公演と同じ、わずか250人の観客の前で、最後を飾った。今後は、モデルやデザイナーといったファッション関係を主軸としたタレントとして活動する。

 感動のフィナーレのはずが、篠田の天然ボケと強烈ジョークで、涙あり笑いありのフルコースな卒業式となった。母からの手紙に号泣して感動的な雰囲気のまま最後の曲。「7年半、本当に皆さんに支えられました。ありがとうございます。それでは聴いてください。『ここにいたこと』」。

 メンバーたちは絶句した。高橋みなみが切り出した。「麻里子さま、本当に申し訳ないですけど、きょ、曲名が…」。キョトンとする篠田は「あれ?

 間違えちゃった?」。「まりちゃん、ちょいちょいタイトル間違えるもんね」と大島優子に突っ込まれ、すすり泣きが聞こえていた劇場は、一転して大爆笑に包まれた。

 仕切り直して「あなたがいてくれたから」を歌いきり、最後のあいさつに入ると、今度は篠田が「ちょっと待って」。続けて「私はやっぱり…卒業しません!」と仰天発言。客席は一瞬の静寂とどよめき。「というのはギャグでぇ~。私のスタートがカフェっ娘なので、最後はカフェから(お客への)お見送りのハイタッチをさせていただきます」と、おちゃめに締めた。「福岡では家族の前ですてきな卒業式をさせてもらったので、今夜は悲しく終わるより楽しく終わりたかったんです。『卒業やめます』ギャグは、いつか言ってみたいと思ってたんです」。イタズラ好きの面目躍如だった。

 篠田にとって劇場は思い出が詰まった聖地だった。05年10月の第1回AKB48オーディションに落選。諦めきれず、劇場に併設していたカフェでアルバイトを始めた。そこでAKBファンに発見され、推薦され、グループ発足1カ月後、1・5期生として特例で途中加入した。この日もカフェ店員として秋葉原の路上でビラを配る若き日の映像が映し出された。「ファンの皆さまのおかげで、今の篠田麻里子がいます」。劇場に通うファンと最後の時を分かち合いたかった。

 今や閉鎖され、劇場入り口の古びたモニュメントに成り果てた元カフェのカウンターが久々に開く。19歳の時に白Tシャツ姿でジュースを運んだ場所で、立派に成長した豪華なドレス姿で手を差し出した。「AKB48は私の青春でした」。スターの道を切り開いてくれたファンたちへ、篠田からの最後の贈り物だった。【瀬津真也】<篠田麻里子の歩み>

 ▼05年10月

 第1期オーディション落選。劇場内カフェ「48’s

 Cafe」でAKB48の「カフェっ娘」と呼ばれるスタッフとして働き始める。

 ▼06年1月

 人気を集めたことから秋元康総合プロデューサーの抜てきでAKB48入り。

 ▼同6月

 AKB48インディーズ2枚目シングル「スカート、ひらり」でCDデビュー。

 ▼08年7月

 初写真集「Pendulum」発売。AKB48メンバー初の単独写真集。

 ▼同11月

 ファッション雑誌「MORE」専属モデルに。

 ▼09年7月

 第1回総選挙で前田敦子、大島優子に次ぐ3位。

 ▼同10月

 日本テレビ系「ギネ

 産婦人科の女たち」で連続ドラマ初出演。

 ▼10年6月

 第2回総選挙で2年連続の3位。

 ▼同12月

 地元福岡のKBCラジオで初の単独冠番組「篠田麻里子と愉快な仲間たち」スタート。

 ▼11年1月

 フジテレビ系「大切なことはすべて君が教えてくれた」で「月9」デビュー。初主演映画「犬とあなたの物語

 いぬのえいが」公開。

 ▼同6月

 第3回総選挙4位。

 ▼同9月

 第2回じゃんけん大会で優勝。AKB48シングル「上からマリコ」(同12月発売)の初センターを獲得。

 ▼12年6月

 第4回総選挙で5位。後輩に向けた名スピーチ「つぶすつもりできてください」が話題に。

 ▼同11月

 高橋みなみに代わりチームAキャプテン就任。

 ▼同12月

 ファッションブランド「ricori(リコリ)」を立ち上げた。

 ▼13年6月

 第5回総選挙5位。AKB48からの卒業発表。