雪組トップ早霧(さぎり)せいな、相手娘役・咲妃(さきひ)みゆのサヨナラ公演「幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)」「Dramatic“S”!」は21日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する(5月29日まで)。早霧の男役17年、現代宝塚を代表する名コンビ「ちぎみゆ」約3年の集大成は、名作映画をもとにした人情喜劇だ。東京宝塚大劇場は6月16日~7月23日。

 声が震え、咲妃は既に涙をこらえていた。

 「最後に向けて走りだし、1日1日が最初で最後と…。ずっと追い掛けてきた方との、お別れが近づいている。考えれば考えるほど、とてつもなく悲しく、寂しく、心細い。あえて考えないようにしています」

 昨年11月22日、いい夫婦の日に、早霧と同日に、添い遂げ退団を発表した。学年差はあるものの、早霧から舞台人として「対等」の立場を求められてきた。宝塚では異色コンビだった。

 「早霧さんの求めるトップコンビ像は、個々として命がけで舞台に立ってこそ、互いが引き立つものだと、教えていただきました」

 男役に寄り添う娘役を「天職」とも思ったが、入団7年3カ月で宝塚を去る。

 「早霧さんの相手役に幸せを感じ、舞台がどんどん好きになっていった。娘役を続けること、早霧さんと一緒に卒業すること、どちらを気持ちよくあきらめられるかを考えたら、比べるまでもなかったです」

 卒業式などでは、ことごとく泣いてきたという。

 「無理に涙腺をロックすると、がんじがらめになりそう。ダメなときは、早霧さんに事前に申請してから泣きます(笑い)」

 全幅の信頼を寄せるトップと伴走し向かう終幕に、幸せをかみしめて進む。

 ◆ミュージカル・コメディ「幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)」(脚本・演出=小柳奈穂子氏) 鬼才・川島雄三監督の代表作映画で、フランキー堺主演の「幕末太陽傳」が原作。実在した品川の遊郭・相模屋を舞台に、人間模様を軽妙タッチで描いた人情喜劇。女郎おそめ(咲妃)をあげて、大尽遊びに興じた佐平次(早霧)は、一文無しながら、ひょうひょうと居座る。番頭まがいの振る舞いをしながら、次々と起きる騒ぎを解決し、礼金をため込んでいく。

 ◆ドリームシアター Show Spirit「Dramatic“S”!」(作・演出=中村一徳氏) 早霧、咲妃コンビを筆頭に「S」をテーマに繰り広げられるショー。宝塚大劇場公演は、103期初舞台生のお披露目公演。

 ☆咲妃(さきひ)みゆ 3月16日、宮崎県生まれ。10年初舞台。月組に配属され12年「ロミオとジュリエット」で新人公演初ヒロイン。同年「春の雪」で明日海りお(現花組トップ)相手役ヒロイン。14年1月、雪組へ移り同9月にトップ娘役就任。昨夏「ローマの休日」ではアン王女を好演した。身長160センチ。愛称「ゆうみ」。