溝端淳平(25)が、故寺山修司さん作の舞台「レミング~世界の涯まで連れてって」(12月6~20日、東京・池袋の東京芸術劇場)に主演することが4日、分かった。10月には、蜷川幸雄演出のシェークスピア劇「ヴェローナの二紳士」で女性役に初挑戦。若手演技派が、演劇の王道を突き進む。

 今年、生誕80周年を迎える演劇界の鬼才寺山さんが1979年(昭54)に発表した「レミング」は、閉塞(へいそく)状況にある若者の内面をシュールな感覚で描いた作品。亡くなる直前の83年に上演され、最後の舞台となった。13年に大規模な野外劇や独特の劇形態で知られる維新派の松本雄吉演出で上演され、今回は再演となる。

 前回、八嶋智人が演じた見習いコック役に抜てきされた溝端は言った。「寺山さん独特の世界観に挑むのはプレッシャーと不安もありますが、光栄なこと。せりふもすてきで印象深い。寺山さんは普段行けない世界に連れて行ってくれる、唯一無二の存在。『身毒丸』を見て以来、いつかは寺山作品にと思っていました」。

 難解といわれる寺山作品だが、「解釈できるまで時間がかかると思うけれど、浮足だっても仕方がない。苦しみなさいということだと思います。寺山さんの広くて、深い独特の世界に入ることで、何か新しいものが見えてくると思います」。2年前の舞台に出演した松重豊には「大丈夫か。生半可な気持ちじゃ、できないぞ。別次元の舞台だぞ」と言われたという。

 演劇経験は少ないが、12年に永井愛作・演出「こんばんは、お父さん」で平幹二朗、佐々木蔵之介と共演。13年には井上ひさし作、蜷川幸雄演出「ムサシ」の佐々木小次郎役で藤原竜也、吉田鋼太郎と共演し、海外公演も経験した。今年10月には蜷川演出のオールメンシリーズ「ヴェローナの二紳士」の女性役でシェークスピア初挑戦と、演劇界を代表する演出家、劇作家、俳優にもまれていく。

 「演劇を志す者にとって、この上ないぜいたく。糧となる人と濃密な時間をすごせるのはありがたい。今年は大きなハードルが2本もあるけれど、いっぱい苦しんで、もっと成長したい」。共演は柄本時生、霧矢大夢、麿赤児らで、北九州、名古屋、大阪でも公演を予定。【林尚之】

 ◆寺山修司(てらやま・しゅうじ)1935年(昭10)12月10日、青森県生まれ。早大教育学部中退。在学中から歌人、詩人として知られ、67年に演劇実験室・天井桟敷を設立。劇作家、演出家、映画監督として活躍し、舞台「毛皮のマリー」「奴婢訓」、映画「田園に死す」などを発表。天井桟敷は、世界屈指の前衛劇団として人気を得た。83年5月4日に、47歳で亡くなった。