是枝裕和監督(58)が次回作として、初の韓国映画「ブローカー」(仮)を手がけることが26日、発表された。昨年のカンヌ映画祭(フランス)で最高賞パルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)に主演したソン・ガンホ(53)の出演も決定。18年「万引き家族」で同賞を受賞した是枝監督とのタッグが実現する。脚本の準備段階で、来年にクランクインの予定だ。

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是枝監督が待望の新作を製作する舞台に、アジアのエンターテインメントをリードする韓国を選んだ。昨年「真実」で初の国際共同製作とフランスの世界的女優カトリーヌ・ドヌーブを起用と大きな挑戦の1歩を踏み出した経緯がある。「前作に続いて母国と母国語を離れての映画作りになります。言語や文化の違いを超えて一体何が伝わり共有出来るのか? そもそも監督とはどういう存在なのか? 作品作りを通して、もう少し踏み込んで模索してみたい」と抱負を語った。

注目はともにカンヌ映画祭で頂点を極め、アジアを代表する映画人として知られるソン・ガンホとのタッグだ。是枝監督は「企画のスタートは今から5年ほど前」と経緯を明かした。新型コロナウイルスが感染拡大する中で「自粛中に『愛の不時着』や『梨泰院クラス』にハマったからやることになったわけではもちろんなく(ハマったのは事実ですが)」と冗談を交えつつも「始まりは、やはり役者さんでした。ソン・ガンホさんとは最初(の接点)は釜山映画祭」と出会いを語った。

同じく出演が決まったカン・ドンウォンとも、仕事で東京に来た時に対面。「おふたりと最初はごあいさつ程度でしたが、お話を重ねていくうちに一緒に映画をという流れに自然と変化していった」と語った。

さらに09年の「空気人形」で空気人形役で起用したペ・ドゥナも起用。「『また必ず一緒に、次は人間の役で』と固く誓っていたので10年越しの夢がかなったことになります」と喜んだ。

「ブローカー」は、子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく“ベビーボックス”を巡り出会う人々を描く。子どもの取り違え事件を通じて親子にとって血と、共に過ごした時間のどちらが大事かを問う13年「そして父になる」、犯罪でしかつながることが出来ない家族を描いた「万引き家族」同様、家族を通じ社会を見つめる作品になりそうだ。

是枝監督は韓国でも人気が高く、朝鮮日報電子版も「世界的巨匠と韓国の人気俳優との出会いに期待が高まる」と報じた。

◆ソン・ガンホ(宋康昊) 1967年1月17日、韓国・慶尚南道金海市生まれ。慶尚専門大放送芸能科で演劇を学び、中退して韓国軍に入隊。除隊後の91年にソウルの「演友舞台」に入団し「童僧」で舞台デビュー。96年「豚が井戸に落ちた日」で映画デビュー。99年「シュリ」、00年「JSA」とヒット作に相次いで出演し、同年の大鐘賞主演男優賞を受賞。ポン・ジュノ監督が初めて全編英語で撮影した「スノーピアサー」に出演し、アジアを代表する俳優として知られる。

◆パルムドール カンヌ映画祭の最高賞。1955年に初めて制定された。フランス語で「黄金のシュロ」を意味する。映画祭が1946年にスタートしてから54年まで、最高賞はグランプリと呼んでいたが、55年にフランスの芸術家ジャン・コクトーが、映画祭が行われるカンヌ市の紋章に描かれたヤシ科の木「シュロ」をモチーフに制作した、黄金のトロフィーにちなみ名称が変わった。最多受賞記録は、日本の今村昌平監督らの2回。