大阪地検特捜部は21日、著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺罪で音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)を起訴した。小室被告は同日夜、大阪拘置所から保釈された。保釈保証金3000万円はレコード会社のエイベックスと妻のKEIKO(36)らが用立てた。拘置所前では何度も頭を下げ「できることなら、また音楽で頑張っていきたい」と再起を誓ったが、公判では厳しい判決も予想される。調べには「金がどんどん入る中で、裸の王様になった」と反省も口にした。

 小室被告が何度も頭を下げた。黒のタートルネックにジーンズ姿。暗闇の中、表門から出てきた小室被告の足取りはぎこちない。100人を超える報道陣の前に立つと「このたびはお騒がせしました」と深々と頭を下げた。一呼吸置いて「これからはできることなら、また音楽で頑張っていきたいと思います」。音楽という言葉に少しだけ力を込め、再起を誓った。

 拘置所前を乗用車で通りかかった浪速っ子から「がんばれよ!」の声が飛ぶと、一瞬ほほ笑んだ。迎えの黒いワンボックスカーに乗り込む際も、深く腰を折った。17日ぶりに保釈された小室被告が拘置所前で“おわび行脚”を続けた。

 保釈保証金は3000万円。小室被告には十数億円の借金があるといわれ、起訴後、保釈請求しても保釈保証金を用立てができないとの声もあったが、妻のKEIKOが奔走。小室被告が楽曲提供していたエイベックスも「当社に多大なる貢献のあった方。今の状況は当社にとっても大変忍びなく、再起していただくきっかけになれば」と救いの手を差し伸べた。代理人弁護士も一部負担し、全額納付された。

 小室被告は調べに「返済期日が迫り、何としても金をつくらなければ破産すると思った」と供述、起訴事実を全面的に認めている。また「生活が豪華になり、金がどんどん入る中で、裸の王様になった」と話しているという。拘置所生活ではかつての栄光の日々を振り返り、後悔と反省の気持ちを強めた。

 魚嫌いの偏食を知っている根強いファンからの差し入れが相次ぎ、拘置所の食事はあまり食べなかったようだ。拘置所からは差し入れの衣類やお菓子が詰まったとみられる段ボール3箱が運び出された。弁護士は差し入れに「小室被告が本当にうれしいと話していた」と明かした。

 逮捕時は憔悴(しょうすい)しきっていたが、時間がたつにつれ、晴れ晴れとした表情も見せるようになった。借金の返済に追われる日常から解き放たれたことに「逮捕されて、むしろよかった」と打ち明けたという。さらに「人生を振り返るチャンスを被害者に与えてもらい感謝している」と前向きな気持ちも見せた。

 くしくも22日は、KEIKOとの結婚記念日。6年前のこの日、芸能人歴代最高クラスの5億円の豪華披露宴を開催していた。小室被告は「軽々しく歌詞に使っていた『チャンス』という言葉の重みを、これからは認識する」と話したというが、あまりにも6年前とは立場が違う。被害金を弁済できるめどは立っておらず、公判では実刑となる可能性も高い。保釈されたとはいえ、いばらの道が続くことになりそうだ。