滝藤賢一(49)が、映画「八つ墓村」(清水崇監督、18日公開)で、作品を象徴する連続殺人鬼・田治見要蔵と、長男の久弥の2役を、狂気さえほとばしる“怪演”で演じ上げた。配給の松竹が製作した77年版(野村芳太郎監督)で山崎努(89)が演じ、日本映画史に強烈な存在感を残した大役に、時代を超えて完全新作として作られた今作で挑んだ。公開を前に、心中を明かした。【村上幸将】

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両手に刀を持った要蔵が、桜の木の下を猛然と走る“32人殺しの暴走”は、日本ホラー映画史に残る恐怖シーンだ。令和版でも、要蔵は桜の花びらが散る中、顔から能面が外れるほど暴走する。滝藤は演じた自らを「狂ってますよね」と評し、思わず笑った。

オファーを受けた時「無理。触れちゃいかん。やってはならない」と思った裏には、山崎が演じた要蔵へのリスペクトがあった。ただ、台本を読み、原作では早々に殺された久弥が「おやじに、なりたくないんじゃ」と吐露するなど、描き方にオリジナリティーを感じた。「僕は超えられるとも、壁に立ち向かおうとも、山崎さんと違うものをやろうとも思わなかった。あれは誰もできない唯一無二のもの。現代に、新しい『八つ墓村』を作りたいという思いを感じ、参加させてもらえれば」と思えた。

令和版は、主演の尾上松也(41)が演じる名探偵・金田一耕助がより軽やかに、奥智哉(22)が演じる久弥の異母弟・井川辰弥は内定ゼロ、彼女なしの大学生と現代風に描かれた。その中、要蔵は原作の世界観を支える根幹として存在する。「松也君が主役で、それぞれ背負うものがあるでしょうが、この役は作品を背負わないといけない責任がある」ととらえた。「横溝さんの原作、清水さんという日本映画界のカリスマがいる。(日本に)これだけ俳優がいて、回ってくるのは奇跡」と腹を決めた。

衣装合わせで「こんなに重い衣装を着るんだ」と思った一方で「格好良い」とも思えた。77年版のロケ地・岡山で桜が開花する時期を狙って撮影し「周りの人に要蔵にしてもらった」という気持ちになれた。清水監督から「何かに取りつかれたように走って欲しい」と演出され一心に走ったのが“32人殺しの暴走”に結実した。公開を前に「もし機会があるなら、お会いし、どうやって殺戮(さつりく)シーンをやったかお話ししたい」と山崎との対面を望んだ。

今後も長く俳優を続けたいと願う。胸の奥には、来年2月に解散する、出身の「無名塾」の恩師・仲代達矢さんがいる。「仲代さんは92歳まで現役でやっていました。そんな人、いないじゃないですか? 長く生きて舞台に立ち続けることに格好良さを感じた。なれるのであれば、そうなりたい」。滝藤の瞳が輝いた。

◆滝藤賢一(たきとう・けんいち)1976年(昭51)11月2日、愛知県生まれ。98~07年まで「無名塾」に在籍。99年「どん底」で初舞台。08年の映画「クライマーズ・ハイ」(原田眞人監督)でブレーク。芸能界屈指の植物通として知られ、NHK Eテレ「趣味の園芸」やBS「滝藤賢一が行く 珍奇植物紀行」などに出演。血液型O。