悩むのは、懸命に生きている証し。韓国女優ハン・ヒョジュ(25)。ヒロインを演じた映画「ただ君だけ」が6月30日から公開された。主演ドラマが韓国で驚異的な視聴率を記録、同映画も韓国で観客動員100万人を突破した。順風満帆の女優人生にも見えるが、初主演ドラマでは自信を喪失して激しく落ち込んだ。今ある自分は、そのどん底があったからだという。

 ピンと伸びた背筋。凜(りん)とした表情。笑顔には清潔感が漂う。ヒョジュは新作「ただ君だけ」で視覚障害者という難役に挑戦。「目が見えない設定も含め、とても難しかった」と言うが、主人公のかたくなだった心を開かせるヒロインを演じきり、映画は観客動員100万人突破の大ヒット。韓国で久しぶりの純愛映画のヒットとしてヒョジュの評価も高まった。国民的女優への階段を着実に上がっているが、実は大きな挫折を味わったからこその成功と自覚している。

 モデル活動をわずかに経験し大学進学後、19歳の時に「春のワルツ」でドラマ初主演を果たした。「冬のソナタ」に連なる人気シリーズ。抜てきは大きな話題になった。ところが「演技の面で次々と壁にぶつかり自責の念が募った。もっと自分はできるはずと思っていたのですが、まったくできなかった。恥ずかしく、孤立し、つらかった」。放送開始後、日本では反響を呼んだが、韓国では視聴率は振るわなかった。「挫折感を味わい、仕事に対して少し投げやりになった時期もあった」。

 直後の映画「アドリブ・ナイト」で監督の指導もあり、内面の部分から役柄に近づく方法を学んだ。「心の痛み、傷を癒やしてくれる結果になった」。シンガポール国際映画祭で主演女優賞を獲得、09年主演ドラマ「華麗なる遺産」は視聴率47・1%。6月までNHKBSで放送したドラマ「トンイ」で不動の人気を得た。どん底からはい上がった。

 悩んでいた当時の自分にもし声を掛けるなら「もっと悩みなさい」と言いたいという。「悩むのは、もっと向上したいという熱意、欲がある証拠。それは懸命に生きることにつながる。思い起こすと、あの時があったから今の自分があると思えます」。昨年10月、日本の芸能プロとマネジメント契約を結んだ。日本でもさらなる飛躍を目指す。

 ◆ハン・ヒョジュ

 1987年2月22日、韓国忠清北道清州市生まれ。高校時代に「ミス微笑コンテスト」大賞受賞。東国大演劇映画科進学後、06年「春のワルツ」でドラマ初主演。以後「アドリブ・ナイト」「天国への郵便配達人」などの映画に出演。06年韓国批評家協会新人賞、07年KBS演技大賞人気賞、08年SBS演技大賞ニュースター賞など受賞。今後イ・ビョンホンと共演した映画「朝鮮の王(仮題)」などが公開。血液型A。170センチ。

 ◆映画「ただ君だけ」

 かつてボクシング王者だったチョルミン(ソ・ジソブ)は暗い過去を引きずり、心を閉ざしていた。視覚障害を持つジョンファ(ハン・ヒョジュ)と偶然出会い、その人柄に影響され心を開いていくが、過去の事件を通じて奇妙な縁で結ばれていることが判明。チョルミンはある決意を胸にジョンファの前から去る。ソン・イルゴン監督。