<連載「気になリスト」(14)>

 数学が得意で「学校の先生になりたかった」という普通の高校生が、子供たちのヒーロー「仮面ライダーダブル」としてデビューしたのは3年前のこと。現在は連続ドラマに引っ張りだこの多忙な日々が続く。俳優菅田将暉(19)。中学生時代、地元大阪を歩いているとたびたび声を掛けられた。07年に大手芸能プロダクションのオーディションを受けたら最終選考に残った。芸能界が気になり始めた。高校進学後に「はっきりさせたい。無理なら無理でいい」として「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募した。最終選考12人に選ばれた。芸能界への道をつかんだ。

 初めての演技は苦労の連続だった。明日から撮影が始まるという時に監督から言われた。「この作品は平成仮面ライダーシリーズ10作が終わって、20周年に向けた1作目になる。君たち次第で、仮面ライダーが終わるかもしれない」。胸にずしりと響いた。「これはヤバイと思いました」。

 俳優の自覚もなく、演技を見られる恥ずかしさもあった。そんな雑念が監督の言葉で消えた。「くさい言い方かも知れないけど、僕にとって『仮面ライダー』が土台。あれがなければ、今がないと思います」。

 来年夏公開の映画「共喰い」(青山真治監督)に主演する。作家田中慎弥氏の芥川賞受賞作の映画化だ。激しい暴力描写や性描写がある。抵抗はなかったのか。「僕もそう思っていたんです。前評判で真っ先に性描写が浮かんでくる。R指定にもなりますから」。原作を読み、青山監督とじっくり話をした。撮影に入ると、作品の世界に引き込まれた。「時代こそ昭和ですが(主人公は)普通の高校生と何ら変わらない。学校に行って帰って、好きな子に会いたい、一緒にいたい。その中からわき出てくる性欲や愛情、親に対して素直になれない気持ち。リアルな気持ちを監督が美しく撮ってくださる。現場は素晴らしく楽しくて本当にぜいたくな時間でした」。

 最近、自分を振り返る余裕が出てきた。「この3年間、自分の感情を役としてしか出すことがなかった。今は自分の感情がちゃんとあることに気付き、それは大事にしなければって」。「仮面ライダー」当時は恥ずかしさを気にする少年だった。確実に大人の俳優へと“変身”を遂げている。【今西孝江】

 ◆菅田将暉(すだ・まさき)1993年(平5)2月21日、大阪府生まれ。08年「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリスト12人に選出された。09年テレビ朝日系「仮面ライダーダブル」に桐山漣とダブル主演して俳優デビュー。「ランナウェイ」「大切なことはすべて君が教えてくれた」などのドラマや舞台「タンブリング」などに出演。12年「王様とボク」で映画初主演。フジテレビ系ドラマ「悪党」(30日放送)にも出演。176センチ、血液型A。(11月22日付

 紙面から)