シンガー・ソングライター小椋佳(69)が発売中のオリジナルアルバム「闌(たけなわ)」を最後のアルバムとした上、来年9月に東京・NHKホールで「生前葬コンサート」を開くことが22日、分かった。単独インタビューで明かした。気力、体力の減退が理由という。同アルバムと異例のコンサートをもって、大掛かりな歌手活動に一区切りをつける。

 「闌」は「宴も闌ですが…」などと使われる言葉。小椋は「今が真っ盛りという意味ですが、物事が終わるあいさつなんです」と話した。70歳を目前にした決意だ。「間違いなく気力、体力は減退したという実感はあります。同期で幸運にも第2、第3の職場を与えられた人でさえ隠居している。音楽活動の場合は定年はない。だから自分でけりをつけなくてはいけないと思った」。黒沢明監督の最後の作品「まあだだよ」(93年)を引き合いに「僕でいうと『もういいかい』なんです」と笑った。

 「闌」はまさに集大成となった。1曲目「歌」は歌と出会い、最終曲「顧みれば」は、わたしの運命に

 関わった

 全ての人に

 ありがとう、と歌う。ラストメッセージにも聞こえる。このほか、あいうえお…を1文字1回だけ使った歌や「まさか逆様の歌」では前から後ろから読んでも同じ言葉になる7音言葉だけで批判精神旺盛な詞を構成。「老いらくの相聞歌

 万葉集より8首を詠う」は傾倒する琵琶の音色で歌い上げる。持てる力の全てを込めた。「若い時は湧き出るままに作っていましたが、今回は1曲10日以上かかった。人生最後のアルバム作りだと思うと、結構身構えました」。

 アルバムには「佳穂里へ」という隠れたテーマも込めた。大ヒット曲「シクラメンのかほり」の由来でもある佳穂里夫人にささげた初めての作品という。その思いは収録曲「蕃茉莉(ばんまつり)」に込めた。

 異例のステージも決まった。来年9月12日からNHKホールで4日間連続で「小椋佳

 生前葬コンサート」と銘打った公演を行う。1日25曲を予定しているが4日間で全て異なる計100曲を歌う。同ホールは76年10月に自分が初めてテレビ出演した時の会場だったことから選んだ。「今まで4日連続で貸したことはないそうです。昔の曲もたくさんやります。100曲は決めています」。

 胃がんなどを克服して活動を続けてきた。「1回幕を下ろそうというのは確かです」と大掛かりな活動から身を引く気持ちは固まったが「生き延びたらまたやるかも知れません」と言い「引退」の2文字は口にしなかった。【笹森文彦】

 ◆小椋佳(おぐら・けい)本名・神田紘爾。1944年(昭19)1月18日、東京生まれ。東大法学部卒。67年に日本勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。71年にデビューアルバム「青春-砂漠の少年」を発表。93年に49歳で同行退職後、東大文学部哲学科に学士入学。00年に胃がんで胃の4分の3を切除。ほかの歌手への曲提供も多く、中村雅俊に「俺たちの旅」、布施明に「シクラメンのかほり」、美空ひばりに「愛燦々」などヒット曲多数。