【ベネチア・リド島(イタリア)6日=村上幸将】渡辺謙(53)が、初参加したベネチア映画祭で、ハリウッド俳優としてVIP待遇を受けた。主演した「許されざる者」(李相日監督、13日公開)が特別招待上映されることで、映画祭側の要請を受け、「水の都」ベネチアの足、船で公式会見場入りした。リド島内には道路もあり車も走っているが、あえて船を横付けにするデモンストレーションが行われた。

 これは、オープニング作品「ゼロ・グラビティ」の米俳優ジョージ・クルーニーとサンドラ・ブロック、コンペティション部門出品作「アンダー・ザ・スキン」の米女優スカーレット・ヨハンソンと渡辺のみの待遇。渡辺は「(乗船時間は)あっという間だった」と口もとに微笑を浮かべた。

 会見では、作品の基になった同名作品を監督、主演したクリント・イーストウッド(83)に関する質問が飛んだ。渡辺は「監督が日本の時代背景に物語を当てはめ、どう踏み込んでいくか集中した時、敬愛するクリントは僕の中から消えた。進んできた道を否定するわけじゃないが、新たな日本映画として捉えていただけるのでは」と強調した。

 一方で、妻の南果歩(49)同伴での映画祭参加を決めたことについて、日本映画界の“意識改革”も訴えた。「誰が支えになって自分がこういう仕事が出来ているのか、ということ。外国で仕事をすると本当に(海外の俳優は)大事にしている。僕らも照れずに大事にしなきゃいかんと。お披露目する瞬間に立ち会ってほしい、というのは日本の映画界もやってほしい」。世界には邦画の新たな地平を、日本には“世界基準”を指し示した。