高畑勲監督(78)が7日、都内で行われたスタジオジブリ最新作「かぐや姫の物語」(23日公開)の完成報告会見で、後輩の宮崎駿監督(72)が9月に発表した長編アニメからの引退を撤回する可能性があると指摘した。宮崎監督との長い付き合いから感じる見解という。一方で、自身の今後については「分かりません」と明言しなかった。

 高畑監督は後輩で盟友の宮崎監督の引退について聞かれると「何の思いもない。宮崎駿はいるんです。いなくなったわけじゃない。何も変わっていないと思います」と冷静に返した。一方で自身とジブリの今後について問われると、胸の内を明かした。

 「在籍してますけれど、ジブリがどうしていくかは鈴木敏夫(プロデューサー)と宮崎駿の2人が決めてきました。だからジブリについては私には責任もなければどう歩むのかよく分かりません。ただ、1つ言いたいことは、宮崎駿が引退というのは、本人としてけじめをつけたかったからそういう方法を取ったんでしょう。『今度は本当です』とか言っていたようでしたけど、変わる可能性はあると思う。長い付き合いですから思います。そういうことがあっても全然驚かないと思います」

 高畑監督は、1959年(昭34)に東映動画(現東映アニメーション)に入社し、63年に宮崎監督が同社に入社してから約半世紀、先輩、後輩の関係を続けてきた。71年にAプロダクション(現シンエイ動画)、73年にはズイヨー映像(現瑞鷹)に共に移籍し、「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」など日本アニメ史に残る作品も共同で作った。宮崎監督の84年「風の谷のナウシカ」ではプロデューサーも務め、翌85年にともにスタジオジブリを設立した。

 高畑監督は宮崎監督にアニメ製作のノウハウ、演出含め多大な影響を与えた。一方で、宮崎監督にとっての高畑監督は、尊敬の対象であると同時にライバルでもあった。そんな関係性ゆえに、高畑監督は宮崎監督の心情を読んでいると思われる。

 自身の最新作が、宮崎監督の魂を復帰へ揺り動かすだけのレベルという自負もあるとみられる。製作に8年、破格の50億円の製作費を投じて完成させた同作について「私は絵を描かない人間。どういう表現になりうるか関心を持ってきた。意味のあることを達成できた。これからの日本アニメで1歩進めた気がします」と胸を張った。今後についても「分からない」と引退の2文字はなかった。【村上幸将】