女優赤木春恵(89)が公開中の映画「ペコロスの母に会いに行く」(森崎東監督、配給東風)に89歳で初主演したことで、「世界最高齢での映画初主演女優」としてギネス世界記録に認定されたことが19日、分かった。認定証を手にした赤木は「長生きするものですね」と素直に喜んでいる。

 都内の自宅で取材に応じた赤木は声を弾ませながら言った。

 「ギネスなんて夢にも思わなかったこと。恐れ多くて、うれしくもあり、照れもあります。89歳で映画主演の話が舞い込んで、自分なりに一生懸命やってきたことで、認定していただけたことがありがたい」

 菅井きん(86)が、08年の映画「ぼくのおばあちゃん」に82歳で主演した際には「世界最高齢の主演女優」で認定されたが、今回は「88歳175日」での赤木の初主演が、「世界最高齢での映画初主演女優」として認定された。

 16歳で映画デビュー。以来133本の映画に出演したが、すべて脇役だった。同作は、認知症の母と介護する息子の物語で、息子役の岩松了とダブル主演だった。「2年前に舞台を引退し、女優として終わりかなと思っていた時に、主演の話をいただいた。撮影現場は親切な方ばかりで、楽しく映画作りができました。寒い時期もあったけれど、自分の中でやり終わらないとダメだと。責任感、使命感がありました」。

 同作は、今月16日に公開されたが、公開初日に3カ所で舞台あいさつを行い、公開前に多くの取材も受けた。「いい作品ですから、1日も長く上映してもらって、1人でも多く見てほしい。私の女優の歴史に残る作品で、記憶に残る作品になったと思います」。その上で、昨年11月に亡くなった大親友の森光子さんをも思い浮かべ、「みっちゃんだったら、『あやちゃん(赤木の本名)、良かったわね』と真っ先に祝ってくれたと思います」と言った。

 6年前に乳がんの切除手術を受け、今も2カ月ごとに定期検査を受けているが、まだまだ健在だ。「まだ70代のつもりで、肉体的にも精神的にも身の丈に合った役で、需要があれば、まだ女優をやっていきたいと思っています」。今後、ギネス記録を更新する可能性もありそうだ。【林尚之】

 ◆赤木春恵(あかぎ・はるえ)1924年(大13)3月14日、満州(現中国東北部)生まれ。40年に松竹ニューフェースとして入社。59年、森繁久弥主宰の劇団に参加。72年にNHK朝の連続テレビ小説「藍より青く」で主人公の母親役で人気を得る。TBS系「3年B組金八先生」「渡る世間は鬼ばかり」、NHK「おんな太閤記」「おしん」の人気ドラマに出演。著書に「おばあちゃんの家事秘伝」。