2020年東京五輪・パラリンピックへ、第2ラウンドのゴングが鳴った。神奈川県など東京都以外の大会開催地となる10自治体の首長が26日、費用負担に関する要請書を都と大会組織委員会に共同で提出。仮設施設の整備費は組織委が負担するとした招致時の原則確認を求めた。小池百合子都知事は来年3月末までに決着させる考えを示し、組織委の森喜朗会長は地方にも応分の負担を求める可能性も示唆した。会場問題で揺れた20年大会が、今度は費用負担で揺れそうだ。

 ずらりと並んだ知事らの顔は、厳しいままだった。都庁の後に向かった東京・虎ノ門の大会組織委員会。森会長に対して神奈川県の黒岩祐治知事が口火を切った。「費用負担は、立候補ファイルの内容を確認してほしい」。宮城県の村井嘉浩知事、千葉県の森田健作知事も大きくうなずいた。

 13年大会招致時の立候補ファイルには「恒久施設は自治体負担、仮設整備費は組織委負担」とある。しかし、9月末になって都の調査チームが「都外の仮設費用は国が補助した上で地元自治体も一部負担する」案を提言。ここに来て「仮設整備費の一部は自治体負担」の流れが生まれた。

 「整備費は組織委負担という原則に基づいて準備してきた」(黒岩知事)自治体はたまらない。不安を拭い去り、組織委負担を確認するため地方が団結した。

 ところが、森会長は「立候補ファイルは都が作った。文句を言われるのは筋が違う」と責任転嫁とも取れる発言。整備費負担も「きちんとした整合性がない」と言い切った。さらに負担割合について「都知事には9月に早く話を進めてくださいとお願いしたが、東京都が始めない。それが遅れた原因」とまで話した。

 これには、知事たちも黙っていない。要請後、不満が爆発。村井知事は「非常に無責任な言い方だ」と森氏を批判。黒岩知事は「新たなルール作りは認めない。(森氏が)知ろうが知るまいが、立候補ファイルは生きている」と憤った。

 コンパクトをうたった東京大会だが、建築費削減のために会場が次々と近郊施設に変更。都や組織委は喜び、会場となった自治体も歓迎したが、費用負担の割合を明確にしてこなかったツケが回ってきた。小池都知事は「年度内決着」を約束したが、18年に「プレプレ大会」があるセーリングの江の島会場を抱える黒岩知事は「異常事態」と吐き捨てるように言った。

 小池氏VS森氏で揺れた会場問題は一段落したが、地方を巻き込んだ新たな問題はさらに大きくなりそうだ。【荻島弘一】