先月末に、「東京港循環航路」の一部を体験する取材に参加した。スタートは、日の出桟橋。ピンク色の「エスエスSerenade(セレナーデ)号」に乗り、東京湾へゆっくり出港した直後、遠目に東京スカイツリーが望める。少し進むと、今度は東京タワー。「陸の東京」を一望できる、水辺からならではの景色だ。

 その後、東京湾を進みレインボーブリッジの下を通過。天王洲から先は、水辺の景色が「運河」に一変する。倉庫街を抜け、鉄橋、水門をくぐり、水をかき分け、ゆったり進む。波といっしょに移動する感覚だ。平均速度は8ノット(時速約15キロ)で、揺れもない。

 再び東京湾に入ると、右手にお台場の施設。デッキに出ると、風は強いが心地よい。約1時間、あっという間の「舟旅」。取材は昼だったが、夜は全く違う景色が現れるだろう。

 都は社会実験を年末まで続け、利用者の声を将来の「本格運用」に生かす方針だ。今後は外国人観光客にも人気の日本橋や浅草など、東京を代表する観光地を含むルートの運航も始まる。担当者は「『舟』を乗り継いで浅草へ行く。そんな楽しみ方もしていただきたい」。陸を移動中に見る景色とは、ひと味違う東京の姿だった。【中山知子】

 ◆「舟旅」の乗り方 社会実験航路は、今回、体験取材した<1>東京港循環に加え、<2>隅田川縦断(両国~天王洲)<3>京浜運河縦断(羽田~臨海部)<4>周遊航路(日本橋~吾妻橋、お台場~お台場)の5種類。まずは<1>が先行して運航し、6月までの毎週金、土曜日に1日2便。ルートは勝どき~日の出~天王洲~お台場~有明~勝どき(右回りと左回りがある)で、1区間500円。1周なら2500円。途中の乗降も可能。6月以降の運航日程は順次発表され、<2>と<3>は今後、イベントとコラボした企画便も予定される。予約は、ホームページ(https://www.suitown.jp/)、【電話】03・6826・4802(平日午前10時~午後5時)。