番組では教育と政治の舞台裏に迫るために文部科学省の教科書検定制度も取り上げる。森友学園のキーワードになった「忖度(そんたく)」。教科書検定制度にも「忖度」があるとする関係者の証言も引き出す。来年度から小学校で正式な教科に格上げされる「道徳」の教科書で、題材に登場した「パン屋」が和菓子を扱う「お菓子屋」に修正されたのは、国が「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度に照らし扱いが不適切」という検定意見をつけたからだった。

 さらに老舗の教科書会社の元編集者が13年前の倒産劇を語る。きっかけは「子供たちに戦争の現実に向き合ってほしい」と盛り込んだ教科書の慰安婦の記述だった

 教科書を巡っては慰安婦の教科書の記述が大きな議論を呼んだ後、沖縄戦の「集団自決」の扱いがクローズアップされた。高校歴史教科書を対象とした06年度検定で沖縄戦での集団自決を巡り、「軍の強制があった」とする趣旨の記述に意見が付き、教科書会社各社が修正・削除。その後、沖縄県民らの強い反発があって文科省が教科書会社に軌道修正を促した経緯がある。

 沖縄県渡嘉敷村で生まれた元理科教諭で村の教育委員長を務めた吉川嘉勝さん(78)は72年前の沖縄戦での「集団自決」を振り返る。「日本軍が配った手りゅう弾で、村長の掛け声を合図に生き地獄になった」。現場にいた吉川さんは母の命がけの言葉で生き残った。

 「島の人たちは、戦争だから仕方なかったと黙ってきた。それをね、軍の強制はなかった話だとか…。はっきりいって胸が裂けそうな怒りを感じた」

 番組内では吉川さんが教科書検定への強い思いを語る。

 MBS報道局番組部の斉加尚代ディレクター(52)は言う。

 「いったい教科書検定制度はどうなっているのだろうか。その仕組みをしっかり視聴者に伝えたい。それが最初の思いでしたが、教科書を取材しているうちに政治的な動きが気になりだし、結果的にかなり政治的な動きを追うことになりました」。

 さらに「取材を通じ、教育現場も萎縮しているのではないかと。見えない政治的な圧力に教科書があえいでいるように感じました」と話した。

 安倍政権下で進められた「教育改革」。番組が進むにつれ、政治と教育の点と線がつながっていく。籠池氏がなぜハガキを送ったのか。「国や郷土を愛する心」を盛り込んだ教科書を警戒する声がなぜあがるのか。その謎が解き明かされる。