埼玉県に、新たな日本一の称号が加わった。花咲徳栄高が23日、夏の甲子園を制し、県勢初優勝を飾った。同校の地元、加須(かぞ)市内のパブリックビューイング会場には、平日にもかかわらず1200人の観客が集まり、声援を送った。県勢としては、浦和学院高が13年春の選抜大会で優勝したが、夏の優勝はこれまで1度もなかった。99回大会での悲願達成に、埼玉県の関係者が大喜びした。

 会場にあと1人コールが響く。清水達也投手(3年)が最後のバッターを打ち取ると、観客は一斉に立ち上がり、ハイタッチを交わした。会場中に歓喜の輪が広がる。涙を浮かべる人もいた。埼玉県民が待ち望んでいた瞬間だった。

 埼玉県は、医薬品や化粧水、ネギ、小松菜など、工業製品や農産物などで日本一の出荷額や産出額を誇る。また、07年に最高気温40・9度を記録した熊谷市は「日本一暑い町」をPRしているが、夏の甲子園では、これまで頂点に立つことはできなかった。それだけに、県民の喜びもひとしおだ。

 この日、川口市内の職場から訪れた会社員の渡辺雅之さん(37)は「僕は埼玉生まれの埼玉育ち。社会人になっても甲子園で埼玉県勢が頑張ってくれているのが、生きる糧でした」。1人で会場に来ていたが、花咲徳栄が得点を挙げる度に周りの観客とハイタッチし、一緒に応援した。試合後にはあまりの感動に涙を流した。「妻は大阪出身で、一緒に甲子園に行ったこともあるが、埼玉は弱いとばかにされていた。この優勝に言葉が出ません。会場に来て本当によかった。埼玉県民の絆を感じました」と感無量の様子だった。

 加須市役所の増田浩之広報課長(51)は「このパブリックビューイングを通して、オール加須の雰囲気がつくれた。徳栄さんにありがとうと言いたいです。どのようにお祝いできるか早急に検討していきます」と話した。ついに、深紅の優勝旗が埼玉の地に降り立つ。【太田皐介】

 ◆埼玉県(さいたまけん)関東地方西部の内陸県。首都東京に隣接し、産業、交通、住宅など、東京の外縁としての性格が強い。かつては農業県だったが、工場団地の建設や企業立地が進み、全国有数の工業県になった。県庁所在地はさいたま市浦和区。人口約730万人(全国5位)。日本で一番多い40の市と、22の町、1つの村がある。県名の由来は諸説あるが、県内の行田(ぎょうだ)市内にある「さきたま古墳群」からという説が有力。民間の研究所が昨年発表した「47都道府県別魅力度ランキング」では、39位。