松尾邦弘元検事総長(77)ら検察OBが15日、法務省に対し、検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正案に反対する意見書を提出した。松尾氏らはその後、都内で会見を開いた。

意見書には、米ロッキード社から政界に資金が流れたことが明らかになり、田中角栄元首相ら政治家、全日空、丸紅の幹部ら16人が起訴された76年のロッキード事件の捜査に携わった、松尾氏をはじめとした元検事ら14人が賛同。検察の独立性がゆがめられるとの強い批判が高まる法案をめぐる動きに、検察OBらも反対の姿勢を具体的に示した。

松尾氏は会見で「今の検察の問題を、象徴するようなテーマ。定年延長の動きが出てきた背景、問題点は検察の体制。しっかり議論した上で、検察OBとしてどう対応するかが大変、大事という認識に至った。まず、特定の検察官の定年延長、問題ありきで、ものごとが出てくること自体、今までにない動きとして大変、危惧している」と語った。

その上で「定年の問題について、ある検察官に延長を認め、他に認めないと言うことによって、杞憂(きゆう)の1つは、そういったところに政権の内部で検察に対する、1つのアクション、影響を与える疑義が生じるのではないか? しっかり議論した上で、みんなの問題意識の中で議論する」とも述べた。

松尾氏は1968年(昭43)に検事に任官され、東京地検特捜部に在籍し、ロッキード事件の捜査に当たった。法務省刑事局長、法務事務次官、東京高検検事長を歴任し、04年6月に検事総長に就任。06年6月に任期を1年以上残して退任するまでの間、裁判員裁判制度の準備など司法制度改革を積極的に推進。06年3月8日には、現役の検事総長として初めてラジオ番組に生出演するなど、普及にも尽力。東京地検特捜部が手掛けた06年ライブドア事件や同年の村上ファンド事件といった大型の経済事件を指揮した。【村上幸将】