存在感が強い人は、その場にいるだけで空気を変えてしまう。遠くにいても、オーラはすごい。楽天星野仙一副会長である。初対面は、先月だった。70歳の誕生日(1月22日)を祝した場で圧倒された。鮮やかなピンク色のワンボックスカーを降りると、「おー、元気か」と約50人の報道陣に声を掛けた。その一声だけで球団職員、我々の背筋もピンと伸びる。穏やかみに見える表情。その優しそうな瞳の奥に併せ持つ厳しさが、そうさせたのかもしれない。

 空気感が違う。今月13日。沖縄・金武町での春季練習のこと。球場正面付近があわただしい。球団職員は、みな険しい表情。指示を出し合いながら、半ば直立不動でその時を待っていた。すぐに「副会長が来る」と分かった。選手も同じだった。球場に隣接するサブグラウンドで調整中だった何人かは、ダッシュであいさつに来た。

 その場にいるだけで、空気感までも変えてしまう存在感。同日に巨人などで活躍した元DeNA久保裕也投手(36)が、テスト生として練習に参加した。背番号の入っていない楽天の練習着を借り、ひたすらブルペンで投げ込みを行っていた。先発から抑えまでをこなす万能右腕は、誰もが知る人物。「ラストチャンス」と練習に励む姿は、また違うモノがあった。16日に星野副会長からテストに合格した旨を告げられ、「本当に涙が出るくらいにうれしかった」と言った。2度の戦力外を経験した男の目は違う。若手のお手本ともなる存在。チームに新たな息吹をもたらすことだろう。【楽天担当=栗田尚樹】