日本ハム斎藤佑樹投手(23)の好敵手がメジャーのNO・1指名を受けた。大リーグのドラフト会議が6日(日本時間7日)、ニュージャージー州セコーカスで始まり、パイレーツが全体1位でカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)3年のゲリット・コール投手(20)を指名した。同投手は高校時代、ヤンキースの1巡目指名(全体28位)を蹴った逸材。全米代表のエースとして09年は日米大学野球、昨年は世界大学野球と2年連続で来日。ハンカチ世代と名勝負を演じた最速101マイル(約163キロ)右腕が、満を持してプロの世界に飛び込む。

 驚く入団拒否から3年、コールがスケールアップしてドラフトの舞台に帰ってきた。セリグ・コミッショナーからトップで名前を読み上げられても、喜ぶ家族とは対照的だった。実は会議が始まる30分前に、パイレーツから指名予定を伝える電話があり、「ドキドキさせようと思って黙っていたんだ」といたずらっぽく笑った。

 信念を貫いた。尊敬する投手がリベラで、ニューヨーク生まれの父の影響もあり、幼少時からヤンキースファン。だが、高卒時にヤ軍の08年の1巡目(全体28位)指名を受けたが入団しなかった。約400万ドル(約3億2000万円)もの契約金を用意されたが、交渉の席にもつかなかった。学業優秀で「マイナーより大学の方が楽しそうだったから」と、地元の名門大を選んだ。ヤ軍が過去46回のドラフトでチーム1位に逃げられたのは、球団初の「事件」だった。

 3年間のリーグ成績は21勝20敗、防御率3・38と平凡にも見えるが、コールの真価は国外で発揮された。実力をフルに引き出したのが、日本ハム斎藤、西武大石らといってもおかしくない。1年時は日米大学野球の“開幕投手”を務め、昨年の世界大学野球では決勝に先発。神宮球場で158キロを計測するなど、強打のキューバを7回0封。国際大会は通算7勝0敗、防御率1・29と勝負強かった。

 パイレーツはコールの右腕に再建を託す。米プロスポーツ史上ワーストを更新する18季連続負け越し。もう失敗は許されない。過去3度あった全体1位指名では、後のスター選手を発掘できなかった。前回9年前の現広島バリントンはパ軍で1勝も挙げられず、低迷の一因となった。球団の懐事情は厳しいが、ハンティントンGMは「今後10年にわたって、チームの顔になれる選手だから」と契約金相場が700万ドル(約5億6000万円)でもひるまなかった。即戦力の呼び声が高いコールも「大学でピッチングを学んだ。これからも日々、進化していきたい」と、エリート人生の幕開けに意気込んだ。