<オリックス2-8阪神>◇23日◇京セラドーム大阪

 待ってました、マット・マートン!

 不振を極めていた助っ人が、ついに目覚めた。試合前に行われた異例のミーティングで、忘れていた闘志に点火。3回に20打席ぶりの安打を放つと、7、8回に2打席連続タイムリーでオリックスを突き放した。チームの連敗は5でストップ。この勢い、忘れんといてや!

 虎が、マット・マートン外野手(30)が、真っ暗で長いトンネルを抜けた。1点リードの7回。金本の二塁打、新井の進塁打で1死三塁。オリックス香月の内角低め141キロ直球を押し出すようにスイングした。痛烈ゴロが地をはい、前身守備の二塁横を抜ける。流れを決定づける中前適時打で5試合ぶりの打点。おかえり、マートン-。黄色いメガホンが揺れた。

 マートン

 1点差だったし、新井さんが自分を犠牲にして進めてくれた。打ちたい気持ちが強かった。

 交流戦開幕から5連敗。12球団で唯一白星がなかった。選手、コーチ陣は練習前のウオーミングアップを終えると、一斉にベンチ裏へ引き揚げた。ただならぬ緊張感の中、約10分間の緊急全体ミーティング。「1日1日、もう終わったこと。新しい1日、試合を迎えよう。9人みんな性格が違うはずなのに、みんな重たくなっている。線を引いて、今日からはい上がっていこうや!」。和田監督の言葉を受け、ナインの士気が高まらないはずがない。

 練習中のアメリカンノック。若手だけでなく新井、鳥谷にマートンまでも外野芝生を何往復もした。「体が万全だとミスショットになっていた。少し疲れた状態なら楽に打ててヒットが出るんじゃないか。そう願っている」。わらにもすがる思いだったのだろう。

 広すぎるストライクゾーンに苦しみ、不満を隠せないほどめいっていた。珍しく弱音も吐いた。和田監督、コーチ陣と話し合い、球団首脳と緊急面談も行った。「久しぶりに勝利に貢献できて良かったよ…」。1秒でも早く、周囲のサポートに応えたかった。

 前日22日はヤンキース傘下2Aでプレーする弟ルークの誕生日。ギフトカードを贈ると、逆に電話で励まされた。「同じチームの日本人関係者に(兄は)どうしたの?

 と聞かれるらしい。ルークは『数字を見すぎるな。今やっていることに集中すればいいさ』と言ってくれたよ」。実は弟は左手小指骨折の影響で、開幕から数試合、出遅れていた。現地時間の4月19日、弟が今季初本塁打をマークした時には「ケガをしてもウエートトレとか頑張ってたんだ」とニッコリ。弟が試練を乗り越えたのだから、兄も負けてはいられない。

 19打席連続無安打を終え、3回に左前打。8回にもダメ押しの中前適時打を放ち、28試合ぶりの猛打賞で打率を2割台に戻した。やっとの思いで交流戦初勝利。「まだまだ先は長いよ」。チームも僕も心配無用さ。そう言わんばかりに、マートンは言葉に力を込めた。【佐井陽介】