ワールドカップ(W杯)日本-コロンビア戦で決勝ヘッドを決め、歴史的勝利をもたらしたFW大迫勇也(28)を称賛する「大迫半端ないって」が、急速な広がりをみせている。高校時代のスーパープレーに驚いた相手選手から飛び出した言葉。SNSでの言葉の書き込みが急増し、一夜明けた20日のテレビ番組は言葉についての特集を続けた。中継したNHKの総局長会見でも「半端ない」が話題に上った。新語・流行語大賞事務局は「ノミネート対象になる」としており、流行語レースでも有力候補になってきた。
新語・流行語大賞選考委員の漫画家やくみつるさんは「私見になりますが、おいしい言葉をいただきました」と話す。オリンピックやW杯があると「何か新しい言葉が出てこないか、手ぐすねひいて待っている」。やくさんにとっても、「大迫半端ないって」は半端ない言葉だった。
「大迫半端ないって」は、08年度の全国高校サッカー選手権準々決勝で、大迫所属の鹿児島城西に2-6で敗れた滝川二の中西隆裕主将が試合後、ロッカールームで泣きながら大迫を称賛した言葉だ。高校サッカーファンの間で名言として広がり、コロンビア戦が行われたサランスクスタジアムでも、サポーターが掲げる「大迫半端ないって」のボードが映し出された。
試合後、大迫について「ホント半端ない」などとツイートが急増。ヤフーのリアルタイム検索の分析によると、試合直後のピーク時に、一気に約1万1000件がつぶやかれた。20日も1時間に1000件前後の書き込みが続いている。同日のワイドショーや情報番組では、日本サポーターが「半端ない」と大迫を絶賛する様子を度々報道。言葉の由来となった映像を流す番組もあった。新語・流行語大賞事務局では「『ハンパない』は02年版の『現代用語の基礎知識』から入っていますが、これまでも『トラキチ』(85年)、『品格』(06年)、『おもてなし』(13年)、『忖度(そんたく)』(17年)など昔からある言葉が、急に脚光を浴びて受賞しています。『大迫半端ないって』もノミネートの対象になります」と話す。
やくさんは「暮れの選考に残っていくためにはあと2試合、大迫が見せてくれるかどうか。大賞候補になるか、シュンとなってしまうか。思いっきりプレッシャーをかけて見守りたい」と、大迫の半端ないプレーを期待している。
◆「半端ない」意味 〔形〕<『半端ではない』の省略形>俗に、中途半端ではなく、徹底しているさま。程度がはなはだしいさま。(デジタル大辞泉から)
【使用例】「大迫半端ないって。あいつ半端ないって」(※注)
【語源】2009年1月5日、サッカー高校選手権準々決勝「鹿児島城西-滝川二」で、鹿児島城西エース大迫勇也が4試合連続で2得点を決めるなど6-2で快勝。敗れた滝川二の中西隆裕主将が試合後のロッカールームで号泣しながら仲間に向かって発した言葉。
※注 サッカーファンに定着した言葉としてNHKのアナウンサーも「半端ないヘディングシュート」と使用。