◆この世に車券ある限り

 メンバー表を食い入るように見つめた。縦書きで2枠に「神山雄一郎」、右隣に1枠「戸辺英雄」。何気なく、2人の名前の1文字目を、横に読んだ。

 「神戸…」。

 売り上げの一部は、5カ月前に激震に襲われた阪神・淡路の被災地へ送られる。さまざまな祈りと感謝を込め、当時発売されていた唯一の連勝式車券、2枠単の(2)-(1)1点に全てを投げ打った。

 頭鉄板レースで、1番人気の決着。370円という好配当だった。

 当たらない時は何をやっても当たらないが、努力は常に忘れたくない。怠れば、運にも見放されてしまう。1995年6月6日の高松宮杯では、不思議な力に導かれたような気がした。

 あれから20年。再び祈りと感謝を胸に、決勝の号砲を待つ。【藤代信也】(おわり)