笠原亮(35=静岡)が10年8カ月ぶりのSG制覇を飾った。インから完璧に逃げ切った。05年多摩川クラシック以来、2度目のSG優勝となった。優勝戦は6着でもグランプリ当確だったが、勝って賞金ランクは9位まで浮上した。2着争いは石野貴之と吉田拡郎が激戦を繰り広げ、石野が競り勝った。吉田は2着ならグランプリ出場だったが悔しい3着となった。

 思いをこらえきれなかった。2度目のテレビインタビューの際、笠原亮はカメラにストップをかけた。冷静な表情が崩れ、涙があふれ出した。上を向き下を向き、両手をひざについた。それでも涙が止まらない。目を潤ませたままインタビューを終えると、10年以上前に体験したウイニングランが待っていた。

 スタート展示はインからコンマ25と大きく遅れた。「起こしで鳴いた。ドキドキしたけど、大丈夫だろうと」。本番は差させずコンマ16で踏み込み、まくらせず完璧に逃げた。1Mを先に回ると、あとは独り旅。歓喜のゴールまで無我夢中で走った。

 初めてSGを制したのは05年だった。10年間、苦しい時期もあった。持ちペラ制度の時は、「どうたたいても合わせられない」とこぼしたこともある。エンジン負けが続き、A2陥落も味わった。F禍にも苦しみ、昨年は150日間も休んだ。ただ、気持ちは切れなかった。「悩んだ時期もあった。でも、家族やその時期に出会った人が、勝つたびにすごく喜んでくれて…」。周囲の支えに報いるSG制覇だった。今年7月にA1復帰。G1戦線で優出し、賞金を上積みした。今節は賞金ランク19位で臨んだ。優勝戦は無事故完走でグランプリ当確だったが、「優勝しか考えてなかった。もし転覆してグランプリに行けなかったら、それはそれでいいと思っていた」。1年の勝負どころと位置付けて勝ち切った。

 優勝金2500万円を加えて、賞金ランクは9位に浮上した。「グランプリは、いいレースをしたい」。再び下克上をもくろむ。【網孝広】

 ◆笠原亮(かさはら・りょう)1980(昭55)年1月19日、静岡県生まれ。初出走は99年5月の浜名湖一般戦。初優勝は01年10月の多摩川一般戦。05年多摩川クラシックでSG初制覇。同年グランプリは初出場で優出6着。通算ではSG2回、G1・3回優勝。170センチ、52キロ。血液型AB。