石野貴之(34=大阪)が、インから快勝し通算4度目のSG制覇を飾った。今年は鳴門オーシャンカップに続く2度目のSG優勝。獲得賞金は1億円を超え、ランキングはトップに躍り出た。2着は辻栄蔵、3着は坪井康晴だった。逆転グランプリを狙った吉川元浩は1Mで転覆、森高一真は5着で、ともにグランプリ出場はならなかった。

 右手を振りながら、声援に応えた。フェンスから身を乗り出しそうになり、大勢のファンが叫んでいる。どこからともなく、コールが起こった。「いしの! いしの!」。石野貴之は喜びをかみしめ、ウイニングランを楽しんだ。会見では「24場で一番、みんなの声が大きい」と笑った。

 エース機を引いたが、序盤は4、6着。見事に立て直した。オーシャンカップでもエース機を引いたが5、6着発進。そこから上昇カーブを描いた。「オーシャンの時は本体を組み直して良くなった。今節はペラを欲張り過ぎて、序盤は良くなかった」。調整をやり直して成績は上昇。修正能力の高さを見せつけた。

 桐生メモリアルでは優勝戦1枠で2着惜敗。福岡ダービーでは4日目にフライングを切った。リズムは良くなかった。自覚して今節に臨んでいた。「流れを変えないといけない。自分にプレッシャーをかけていた。賞金1位でグランプリに行くと言い聞かせて、(大村に)入ってきた」。1位になるには優勝しかない。自身に課した、ハードルの高いノルマをクリアしてみせた。

 初のトップで決戦に臨む。「何位で行っても優勝できればうれしいけど、1位から優勝すればものすごくうれしい。その権利は僕しかない。黄金のヘルメット? 近いと思います」。グランプリは過去3度出場して3優出。4度目のチャレンジは、最も戴冠に近い位置からだ。【網孝広】

 ◆石野貴之(いしの・たかゆき)1982年(昭57)6月3日、大阪府生まれ。02年5月住之江で90期生としてデビュー。10年オーシャンカップ(丸亀)でSG初優勝。SG優勝は通算4回。G1優勝は5回。同期は吉田拡郎、赤坂俊輔、長野壮志郎ら。166センチ、52キロ。血液型O型。