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インパクト有終V!武豊感無量/有馬記念

- 引退セレモニーで馬から降りる直前、ディープインパクトにキスをする武豊騎手
<有馬記念>◇24日=中山◇G1◇芝2500メートル◇3歳上◇出走14頭
ありがとうインパクト! ラストランに臨んだディープインパクト(牡4、栗東・池江泰郎)が3馬身差をつけて圧勝し、有終の美を飾った。騎乗した武豊騎手(37)は90年オグリキャップ以来16年ぶりの勝利を挙げ、愛馬との別れを惜しんだ。2着にはポップロック、3着にはダイワメジャーが入った。
万感の思いを胸に飛んだ。逃げるアドマイヤメインがつくり出した激流は、ディープインパクトにとって最高のエネルギー源となった。12万人近くの大観衆が見守る中、ひたすらため込む気持ちを解き放ったのは残り600メートルだ。後方から一気に前をのみ込もうと、進撃を開始。あん上の武豊騎手は、その感触を体に刻み込んだ。
われ先にと内へ殺到する2番手グループを尻目に、馬場のど真ん中で見せた堂々のラストフライト。誰にも邪魔されない広大なスペースで、440キロに満たない体を思い切り伸ばした。1年前の有馬記念で、よもやの2着。無念にくれたターフを舞台に、記録にも記憶にも残る日本最強馬が、最後までインパクトスタイルを貫いた。
「ディープ!」「ユタカ!」「ありがとう!」。天才と怪物のコンビを、スタンドの大合唱が迎えた。「すべてのレースに強烈な思い出がある。いつも驚かされるが、今日は本当に強かった。強烈な飛びだった。4コーナーを回る時の脚はすごかった」。武は興奮気味にまくし立てた。「彼は種牡馬生活に入るが(今年失格した)凱旋門賞だけ現役復帰できないんですかね」。半分は冗談でも、半分は本気。「今でも世界一強いと思っている」と本音は隠さなかった。
武は「この2年間は、ずっとディープインパクトが頭の中にあった。こういう馬は初めて」と振り返る。それは、苦悩の2年間でもあった。「走りたがる気持ちが強すぎて苦労した。本当に難しい馬」。加えて、勝利だけを義務付けられていた。敗北は許されなかった。「常に責任感があった。こんなに考えさせられたことはなかった」。
競馬が行われる国のどこから騎乗依頼があっても、すぐに乗れるように世界中の血統の研究は欠かさない。「まぁ、それが仕事だからね」と笑いながら米、英、仏、豪と世界中で馬に乗ってきた。その中で、インパクトに出会った。「ディープインパクトに乗れるのは光栄。でも責任がある」。超一流馬に乗れる権利と引き換えに、常勝という重荷を背負っていた。
最終レース後に行われた引退式で、武は感無量だった。「ディープにおめでとうと言うのも、これで最後。あと、ありがとうも…。ディープの子どもに早く乗りたいね。ディープは最強馬です」。2年間にわたって信頼関係を築いた愛馬から下りる時には、その首筋にそっとキスをした。
「走っているというより飛んでいるような感じ」。語り継がれる武の名言は、閉塞(へいそく)した現代へ一筋の光を与えた。自ら命を絶った子供は「生まれ変わったらディープインパクトになりたい」とつづった。その走りを目にし、歴史の証人になったこと。その走りに胸を打たれ、涙したこと。すべては希望となり、力となった。ディープインパクトの名前は、決して忘れられることはないだろう。【高橋悟史】
[2006年12月25日8時28分 紙面から]
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