「昔は8時半の男って呼ばれてたんだよ!」

 そう言い残すと、G大阪の長谷川健太監督(50)は、笑いながら取材を受けていた記者室から出て行った。

 何のこと? 

 そう思う人もいるかも知れません。長谷川監督が清水に所属していた現役時代の98年。先発ではなく、途中出場だけで決めた9得点が、Jリーグの記録として残っているのです。広島のFW浅野拓磨(20)が、9月26日の清水戦で、長谷川監督の記録に1点差に迫る途中出場から今季8点目を達成。17年も前の記録のことを問うと、前述のような答えが返ってきたというわけです。

 その長谷川監督。昨季は国内3冠。そして今季はACLで日本勢唯一の4強に進出し、リーグ戦、ナビスコ杯、天皇杯とまだ優勝の可能性を残している。

 ACLは同30日の準決勝広州恒大との第1戦で、準々決勝で退席処分を受けた影響からベンチ入り停止となり、1-2の敗戦。ホームの第2戦は必勝が求められる。リーグ戦もここにきて苦戦し、年間4位。ナビスコ杯も7日の準決勝新潟との第1戦で惜敗。あえてサッカーに例えるならば、1点を追う終了間際に、スーパーサブとしてピッチに送り込まれるようなものだろうか。

 どんなに少ない時間でも。どんなに苦しい展開でも。逆境をものともせずに結果を残してきたからこそ「8時半の男」と呼ばれるようになったに違いない。

 季節はもう秋。シーズンは佳境に差し掛かりつつある。

 「8時半の男」の意地を-。タイトルという形で、見せてほしい。


 ◆益子浩一(ましこ・こういち)1975年(昭50)4月18日、茨城県日立市生まれ。00年大阪本社入社。サッカーW杯は10年南アフリカ、14年ブラジル大会。ラグビーW杯は11年ニュージーランド大会を取材。サッカーとラグビー、そしてビールが大好き。