<アジア杯:日本1-1ヨルダン>◇9日◇1次リーグ◇B組◇カタール

 ザックジャパンを、国際Aマッチ2試合目のDF吉田麻也(22=VVVフェンロ)が救った。日本代表(FIFAランク29位)はヨルダン代表(同104位)相手に引き分けた。DF吉田は敗色濃厚のロスタイムにヘディングで値千金の同点ゴール。1次リーグ初戦で、何とか勝ち点1を運んだ。前半には左足で先制点を決めたかにみえたがオフサイドの判定。MFアブデルファタハのシュートを左足に当て先制点を許すなど失点にも絡み、3度もネットを揺らす吉田の“独り舞台”。2大会ぶり4度目の優勝へ、13日には必勝のシリア戦に臨む。

 背番号22を背負ったDF吉田が、日本を救った。敗色濃厚の後半ロスタイム。MF香川の左CKを受け、MF長谷部が右足で好クロス。このボールにファーサイドで吉田が高く跳び上がる。見事な跳躍でヨルダンDF陣よりも頭ひとつ抜きんでて、たたきつけるようにヘッドを決めた。土壇場でねじこんだこん身の一撃。代表初ゴールだった。

 吉田

 ミーティングでも相手はファーサイドにボールが来たときには、ボールウオッチャーになると確認していたので、狙い通りでした。

 チームを救い、自らが絡んだ失点も取り返した。前半45分、相手MFアブデルファタハのシュートが吉田の左足にあたってコースが変わり、先制ゴールとなっていた。痛恨の失点を、値千金のゴールで取り戻した。

 日本では人材不足とされる長身センターバック(CB)。今回は闘莉王、中沢という看板2人が故障で招集されず、代役候補の栗原らもケガ。昨年末まで、CBでは唯一の海外組としてプレーしていた吉田に代役として白羽の矢が立った。

 A代表は昨年1月のアジア杯最終予選イエメン戦(アウェー)以来となるが、この時は若手中心のメンバー。実質的には代表デビュー戦といっても良かったが見事に「主役」になった。

 前半には、ゴール前でバウンドした、シュートが難しいこぼれ球を、左足で蹴り込みながら、オフサイドと判定された。そして、同45分の失点。さらに終了間際の同点弾。この試合3度ネットが揺れたが、いずれも吉田によるものだった。

 けがを乗り越え、一層たくましくなった。昨年1月。名古屋在籍時に目をかけてもらった本田圭を追うようにVVVへと移籍した。しかし加入直後に、左足甲を骨折。日本で手術、治療すれば、ギリギリ同6月のW杯に間に合う症状だったが、言葉もうまく通じないオランダで受けた手術がうまくいかなかった。W杯は棒に振った。

 再手術を受け、復帰は同10月までずれ込んだ。目標だったW杯は、選考にさえ加われなかった。だが、すぐにアジア杯へと切り替え必死のリハビリに耐えた。両親が名付けた「麻也(まや)」は、時に女性に間違えられるが、たくましい植物の「麻」が由来。土壇場で、日本を救ってみせた。

 ただ結果は、格下相手に引き分けた。もちろん満足などしていない。

 吉田

 闘莉王さんなら3点は取っていた。アジアで勝つことは難しいと感じた。次はもっと苦しい展開になると思うけど、切り替えたい。

 日本の課題は決定力あるFWと、そして高く、たくましいCB。その待ち望んだ人材が、真剣勝負の中東カタールで誕生した。